◆第15話:些細な綻びと爆発寸前◆
翌朝――
「むう……王様、セディオスと紅茶飲んでた……楽しそうで……僕なんて……」
エクリナは、茶色の短髪を無造作に逆立てた長身の男――セディオスと共に紅茶を楽しんでいた。
無骨な体躯に似合わぬ、穏やかな笑みを浮かべながら。
庭先でライナが小石を蹴りながら呟く。
「僕だって、王様のそばにいたいのに……いつもセディオスばっかり……」
その目には、拗ねたような、それでいて切なげな光が宿っていた。
そのとき、背後から静かな声。
「……ライナ。あなた、昨日から機嫌が悪いですね」
「うっ……べ、別に。関係ないしっ!」
「……そうですか。では、そういうことにしておきます」
その返事の裏で、ルゼリアの心の奥に、針のような違和感が生まれていた。
(……あの子は、何かを抱えている。それは分かっているのに――言葉が届かない)
言葉の温度は冷たく、距離は近いのに遠い――
その違和感に、ライナの胸がピリついた。
「もう、やだっ!! みんな僕のこと、子供扱いして……見てくれないっ!!」
叫びと共に、魔力が暴発。小さな木々が弾け、紫電が駆け巡る。
「ライナ、落ち着きなさい!」
「やだっ! ルゼリアのくせに、偉そうにしないでよぉっ!!」
「たわけ!、何をしておるか! 館の庭を壊す気か、うぬら!」
怒気すら孕んだ声で現れたエクリナ。
「わ、王様……これは、その……」
「……ふん、後で話を聞いてやる。今は止めぬと、我が紅茶が冷めるではないか」
「「……っ!?」」
こうして――戦いの火蓋は、静かに、だが確かに切って落とされた。




