表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王メイドエクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第一章:それでも、主の傍に

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/116

◆第10話:主の好物と、王の矜持◆

ある晴れた午後、エクリナは一人、町へ買い出しに出ていた。目的は、セディオスの大好物――特製ハーブバケット。

いつもはエクリナお手製のパンが食卓が並ぶのだが、どうしても”特製ハーブバケット”が再現できず仕方がなく定期購入しているのであった。


「ふふ、これが手に入れば、今夜は我が渾身のスープと合わせてみせよう……しかし、そろそろこやつの製法を我が手中に収めたいものだな」

ウキウキと袋を抱えて歩くエクリナ。だが、そんな平穏な時間を切り裂くかのように、突如として空気が揺れた。


ゴロツキどもが側道から現れたのだ。エクリナにイヤらしい目線を送り、ナンパしてきた。

「随分とべっぴんだな、ご主人様のところへ帰る途中か?、なあ、その前に俺たちにご奉仕してくれよ?」

ゲヘヘと品の無い声であった、”つまらん”と思ったエクリナは無視して立ち去ろうとする。


それを妨害し、不意に腕を掴まれてしまった!。そしてそれは”特製ハーブバケット”が入った袋の落下を意味した。

「……!? なっ……っ!」

咄嗟に拾おうとするが、ゴロツキに踏まれてしまいエクリナは硬直してしまった。ゴロツキどもは、おとなしくなったと勘違いして更に迫ろうとしていた。


「………………」

沈黙。 そして――

「……許せぬ」

エクリナの瞳に光るのは、激怒ではない。 それは冷ややかで凍りつくような、王の怒気。

指を鳴らした瞬間、空間が揺れ、敵の集団ごと森の奥へと転移される。 その瞬間、エクリナの手に魔杖アビス・クレイヴを転移させ握りしめる。


ゴロツキどもは訳が分からなかった、今まで街にいたのに……何故森の中にと…

そして、ナンパしていた可憐なメイドの手には杖が握られており、この世と思えない気配を発生させていた。

「あ、これは……」と続きを彼らは想像することはできなかった、

轟音と共に、森の一部が蒸発した。ゴロツキが震える間もなく、次の呪文がすでに詠唱されている。


 ◇ ◇ ◇


十分後。

森の奥には、何も残っていなかった。ただ、静寂と、吹き抜ける風だけが証人だった。


 ◇ ◇ ◇


夕方、食卓には香ばしく焼けたパンと、ハーブの香るスープ。

「そういえば、今日森の北側で“どっかーん”ってすごい音がしてさ! 近くで採取してたから見に行ったんだけど……あそこ、何もない平原になってたんだよね……」

ライナがパンを手に首をかしげ、ぽつりと呟く。

「……あれができるのって、うちじゃ……いや、まあ、気のせいかもね?」


エクリナはスープを啜りながら、涼しい顔で返した。

「些末な問題だ。我が王たる矜持に触れた愚か者への、当然の報いである」

セディオスは呆れ半分、笑み半分でパンを口に運んだ。

「……やっぱり、エクリナが焼いたバケットは最高だな」


エクリナは、少しだけ頬を染めて、そっぽを向いた。

「ふ、ふん……当然であろう。我がこだわって焼いたパン、うぬの好みに合わぬはずがなかろう……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ