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魔王メイドエクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第七章:狂信者の夜会

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◆第108話:新装備の家族会議◆

朝食後―――

館の居間に、いつもの家族が集っていた。

悪夢の檻に囚われた件を鑑み、戦力の底上げが必要。

エクリナは久々の家族会議を招集した。


長机には、魔装や戦具の図面、素材候補のリスト、戦闘スタイルの覚え書き。

各々が自分の役割と課題を携え、今日この場に臨んでいる。


「まずはルゼリアからだな」

堂々たる声音に呼ばれ、赤髪の少女が背筋を伸ばす。


「うぬの間合いは中〜長距離……だが、近接を挑まれた場合は分が悪いな……」

「……仰るとおり、です。私の特性は『精密射撃』と『軌道操作』。

 詰め寄られると手こずる場面が多いですね」


一瞬悔しげに目を伏せたルゼリアは、すぐ顔を上げる。

「可能であれば、《フレア・クリスタリア》を改造し、近接にも対応できるよう調整したいですね」


「それなら、こういう案はどうでしょう」

ティセラが術理板に走り書きしながら言う。

「飛晶形態を発展させ、“鉤爪”へ変形装着。〈炎刃〉を出して切り裂く近接補助に――」


「それは……良い案です! さすがティセラです!」

ルゼリアの紅い眼がきらきらと輝く。

「ふむ、決まったようだな。次に移ろうか」


エクリナが頷き、視線を横へ。

「次は……ライナだな」


その直後、隣のセディオスが軽く手を挙げる。

「ライナについて提案がある。戦い方を以前から見て思ってたんだが……突進力と切り込みの速度は、もっと活かせる気がしてな」


「そうなの!? 嬉しい!」

ライナが嬉々として身を乗り出す。


「ああ。極東、和都ユヅラン伝来の『抜刀術』という剣術がある。

 『静』から『動』へ一挙に移り、一瞬で斬る。 精神集中と一撃の重みを極める流儀だ。

 ライナの俊足と組めば、〈必殺の一閃〉になる」


「かっこいいっ! それ、やりたいっ!」

ぱぁっと顔を輝かせるライナに、セディオスが柔らかく笑む。


「なら、専用戦具が要るな。ティセラ、いけるか? 製造法は俺が調べよう。製作も手伝うよ」

「もちろん。……面白くなってきましたね」


空気が熱を帯びる広間で、エクリナがふっと息を吐く。

「残るは――我と、ティセラ、そしてセディオスだ」


ティセラは一考し、口を開く。

「私は、『魔法そのもの』を切る武器が欲しいです。

 魔力封じや精神干渉系の攻撃に悩まされてきましたから」

「なるほど。ではその方向で進めよう」

静かに頷くエクリナ。


隣でセディオスが肩を竦める。

「俺の場合……精神世界に行った時にも感じたが、やはり『魔核』の減退が深刻だな。

 《ディスフィルス》があるとはいえ、大技を連発できず、決め手を欠いている」

「……ティセラ、前にも相談したが――」


ティセラの表情が曇り、続きを遮る。

「……分かってます。でも、それに対しては本当に提案したくはないんです」

「それでも、答えをくれ」

セディオスの眼差しは真っ直ぐだ。


「はあぁ~」

深いため息をつき、ティセラは諦めた。


「強いて言えば、『時魔法』で魔核を”減退前に巻き戻す”方法があります。ただし、持続は五分が限界です」

「効果を失うと……急激な魔核の”損耗”が起きるはずです。『ありえなかった刻』の魔核を使うのです、心臓にすら過負荷が生じます」

淡々と説明するティセラ。


「推測です……ですが、起こりうる顛末は一つです」

「最悪、 命を落とします……」

ティセラはセディオスの目を見ながら言う。


「それでも、”いつか”必要な時は来るだろう」

言い切るセディオス。


天を仰ぎ思案するティセラ、やがて観念したように頷いた。


「……分かりました。作ってみます」


エクリナ・ルゼリア・ライナは二人のやり取り、セディオスの覚悟を静かに見ていた。

それは互いの信念のぶつかり合いのようにも見えた。


「……ふむ。そして最後に我だが、全体能力を底上げできる〈補助戦具〉は作れぬか?

 『魔力支援』『瞬時防御』、それと……威力の増幅もあればなお良い」

「欲張りすぎではありませんか、エクリナ?」

ティセラは苦笑しつつも、紙に書き留めていく。

「まあ……できる限り、やってみましょう」


こうして、新たな“備え”の方針は固まった。

この日、彼女らは“守るための戦い”をより確かなものにするべく、各々の新装備へと動き出す――。

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