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魔王メイドエクリナのセカンドライフ  作者: ひげシェフ
第六章:偽りの楽園、砕かれる朝

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◆第99話:抗いの終端、魔哭神の断罪◆

繰り返される剣劇。

交錯する魔力。


セディオスとライナが猛攻を仕掛け、ルゼリアが新たな極大魔法の詠唱に入る――。


だが、それは阻まれた。


「地が砕ける音、聞いたことがあるか?

 大地に背いた貴様に、土が裁きを下す――

 〈ガイア・ブリンガー〉ッ!!」


ヴァルザの叫びと共に、大斧形態《ヴァスト=ディバイダー》が振り下ろされる。

極大地属性魔法を宿した一撃。


大地が震え、視界が揺れ、空間そのものが崩れる。

前方に巨大な“断層の縦線”が走り、裂け目から無数の柱状岩塊が噴出した。

隆起した岩の柱が、戦場を滅茶苦茶に切り裂く。


「来るか……〈アストラル・リバース〉ッ!!」


セディオスが咄嗟に《魔導充式剣ディスフィルス》の結界魔晶を起動。

逆位相結界による禁奥義――受けた魔力流を反転させる反撃技。


しかし、それすらも押し切られた。


「くっ……! があっ!」

「うわっ……がッ!」

「うっ……あぁ!」


セディオス、ライナ、ルゼリア――三人の化身が弾き飛ばされ、衝撃波が地を割る。

精神世界の空間が軋み、景色がノイズのように歪んだ。


「ふ、はははははッ……情けないな。もっと吾を愉しませろ」

魔哭神ヴァルザは愉悦の声をあげながら、破壊の余韻に浸る。

その眼差しには、戦士たちを弄ぶ“神”の残酷な好奇心が滲んでいた。


「本当に……いけ好かない奴だ……」

セディオスは地面に片膝をつきながら呟いた。


「だが……強さは、あの時と……変わらない……なら、まだ……抗える」


――倒すためではない。

“あの光”を取り戻すために。


《魔導充式剣ディスフィルス》の魔晶は限界に達していた。

魔力供給量は既に臨界。通常攻撃でさえあと数撃が限界だ。


「セディオス……私たち……そろそろ、限界のようです……」

ルゼリアが静かに言う。


彼女とライナの身体からは、魔力の粒子が零れ落ちていた。

エクリナの精神世界に送り込まれた“魔力の化身”――

それは本体ではなく、彼女の想いに呼応して顕現した存在。


極限の消耗により、輪郭が薄れ、声すらも風に溶けていく。


「最後に一発、ド派手なのをぶち込もうよ、リア姉!」

ライナが気丈に笑い、《魔斧グランヴォルテクス》を雷殛槍刃スピア形態に変形させる。


「……そうですね。私たちにできる“限界”を見せてみましょう」

ルゼリアは《焔晶フレア・クリスタリア》紅蓮双輪形態を構え、

二重の花弁のような魔法陣を回転させた。


「セディオス。時間を稼いでください。――ほんの三十秒で構いません」


「ああ、任せろ……」


言葉は少なかった。だが、決意は揺るがない。

セディオスは《魔導充式剣ディスフィルス》の鍔部を外し、焼け焦げた魔晶を抜き取る。

腰のケースから新たな魔晶付き鍔部を掴み、嵌め込む――淡い光が刃に走り、魔力循環が復帰した。


「……これで、まだ戦える」


一息だけ吐き、セディオスは剣を構え直す。

再びヴァルザへと、真っすぐに歩み出た。


「作戦会議は終わったようだな? さあ、もっと愉しませろ!」


ヴァルザの口元が吊り上がる。

新たな“玩具”の最後の足掻きを、彼はどこまでも愉しもうとしていた。



だが、その空間の端――。


沈黙していた“核”に、微かな光が灯る。

花弁のような光輪が広がり、失われたはずの魔王の気配が、再び息を吹き返していた。

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