第2章開始時点までのあらすじ
新章開始に当たり、これまでのあらすじをまとめました。
新章の1話に当たる通算17話につきましては、明後日に投稿する予定です。
由良史久真は麻痺性難病の障碍を持ちながら、症状の一つとして記憶力の異常発達を得ていた。現実の生活では、杖と神経アシストシステム無しでは暮らせない彼も、ゲームでは違った。仮想現実を舞台とするVRMMO(大人数参加型仮想現実)ゲームでは。
シグマは神経アシストシステムを改造し、大脳とゲームと直結することで無類の反射神経を得て、無敵の戦士となることができた。つまり、彼は、現実では決して享受することはない健常すぎる肉体を、仮想現実内で得ていたのだ。しかし、それはあくまでゲームの中の話だった。
そして、アルバイトとして勤めたゲーム会社の製品、LSF(The Lithic Stage Fulldiver)を始めたときに、彼の人生は変わった。
リスタは、剣と魔法魔術のRPGで、現実と見まごう程自然な感覚が好評で発売直後ながらトップゲームだ。史久真はいつものアバター、シグマとなってゲームを始めたが、戦士プレイに飽きており、魔術士を選んでいた。
ゲームでは、名誉以外何の特典も無い、一代限りの準貴族である士爵の嫡子となった。17歳の門出ではあったが、母は既に亡く、後ろ盾となるべき父親もすぐに病死してしまう。
偶然近くに来合わせた、父の旧友であるドミトリー伯爵に見いだされ、隣村に出没する魔獣討伐クエスト兼チュートリアルを受け、ミッションクリア時には、士爵推挙を訳される。
そして、予めキャラクタ登録していた、幼馴染み設定の美少女ラムダと共に討伐に向かう。隣村に向かった彼らは、地元の若い村人の支援を受け、魔獣のアジトがとある小山の山腹に有る洞窟であること突き止める。
討伐対象のオーガは熊を超える大鬼のような魔獣だ。初級魔術師の手に負える相手ではない。通常は多人数パーティを起こして斃すことが想定されていた。しかし、同じゲームで戦士をやっていたときに、斃し慣れていたシグマは、あまり恐怖心を抱かず、自らの特殊能力である反射神経の良さで、風魔術と火魔術の並行連唱を編み出し、ラムダの活躍もと共に、初級魔術にて上位の魔術の破壊力を得て、魔獣の群れを壊滅させる事に成功する。
クエスト完了報告に訪れた伯爵城では、褒美と共に士爵推薦状を得る。そして、彼の魔術センスを見込んで、当代きっての大賢者トリニティー・ラティスへの弟子入りを勧められる。
推薦状を携えたシグマは、ラムダとともに、また監視者のシーフ、アンジェラを付けられる、転移ゲートを使って、王都に向かう。首尾良く士爵を陛爵したシグマは、大賢者トリニティー・ラティスに会うべくシャラ境に向かう。
途中、狼に似た魔獣のヴォーグに襲われるが、下級魔術を得たシグマは、難なくこれ撃退する。しかし、シャラ境を目前に、行動不能の麻痺に襲われ気を失う。
偶然老婆の家に担ぎ込まれたシグマは、行動不能がシステムのバグと判断し、ゲームを中断しようとするが、現実へもどることができない。そして、気絶と覚醒を繰り返す重篤な状態となる。
再び覚醒した、シグマは自らの胸に大きな手形が付いていることに気付く。小康状態となった彼だったが、魔術を喪った上にやはり現実には戻ることができなかった。
そして、彼は実は死ぬ=ゲームからの追放?する運命となるべき大いなる呪いを掛けられていたが、対抗呪術をもって、ゲーム内世界につなぎ止められたことを知る。シグマは自らを助けた老婆カーラこそ、大賢者だったことを見抜く。
そして、シグマは呪いによって上級魔術を会得することを阻害されており、大賢者の力を持ってしても解除できないことを知る。上級魔術、特に火風水土の4大属性魔術の上級魔術会得は、魔術士のほとんどが成ることを願う、賢者へのクラスチェンジの必須条件であり、これをあきらめざるを得なくなる。また、魔術を会得するために魔術士が受けるギフトは2度と得ることがないという最悪の状況も突き付けられる。
しかし、魔術士として生きたいと主張するシグマを不憫に思った、大賢者カーラは、呪いの主への義憤も有り、シグマに刻印魔法を授ける。
刻印魔法こそは、魔術を会得するための魔水晶を作る恐るべき魔法だった。そしてシグマの驚異的な記憶力は、中級以下の主立った魔術呪文を暗記し、次々と魔術を会得することを可能とした。
シグマは、このゲーム世界で過ごすことを受け入れ、得られた特異な能力を梃子に、シグマは自らに呪いを掛けた者に復讐を誓い、旅立つことを決めたのであった。
それでは2章の開始です。
今後とも、「賢者失格 - だけど、刻印魔法でのし上がる -」をご贔屓にお願い致します。