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ケース5:ギルドの自立支援援助 その2


「おう、来たぞ。キスケのおっさん」

「……こんにちは。一番最後ですね」


 ギルド講習の日。集合時間は、朝の五時と指示したはずなのだが、件の少年は、朝の八時を過ぎた頃に現れた。俺が今まで見て来た中でも十本指に入るくらいの態度の悪さだ。ちなみに、残りの九人は、どれも問題児というレベルを逸脱しており、今回の講習で一切学習せずに、違約金の支払いのために奴隷落ちした。


 俺が判断するに、この少年は、ギルドの事務員のオッサン程度・・である俺を完全に見下しているのだろう。得る物がないと思っているのだろう。

 だが、そう思っているのも今の内だ。と内心、黒い笑みを浮かべる。


「それじゃあ、準備しろ。それと、この白いチョーカーを付けろ」

「はぁ? なんでそんなものを」

「いいから付けろ。お前は、三時間以上も遅刻したんだから」

「はいはい、分かったよ」


 他の受講生たちは、既に作業に入っている。その中で、彼はノロノロとチョーカーを首に巻きつつ、ギルド近くの運動場へと向かう。

 ちゃんとチョーカーを首に巻いていることを確認して、俺は、指示を出す。


「それじゃあ、この初日の午前の作業は、このグラウンドを走ることだ」

「はぁ、何で俺が」

「つべこべ言わず、走れ」


 一切の感情を込めずに、命令をする。それに対して、反抗的な態度を撮り続ける少年は、締まるチョーカーを押さえて、苦しみもがく。それもしばらくして収まり、こちらに殺気の篭った目を向けてくるが、盗賊の視線に比べたらそよ風みたいなものだ。それに……


「走れ」

「っ!? くそっ!」


 また首が締まると理解して、走り始める。

 原理は簡単だ。彼の首に巻いて何時チョーカーは、隷属の首輪の劣化版だ。隷属の首輪は、奴隷に着けられるもので奴隷の証だ。他にも腕輪や刺青のタイプがある。今回使用したのは、命の危険がある命令の拒否権や道具の効力は装備してから二日であるなど、様々な面で劣化している。まぁ簡単に言うこと聞かせるための道具だ。


 今回、ギルドの講習に集まった者は、二種類いる。一つは、ギルドから学び取ろうとする意思がある者。そうした者たちは、勤勉で、様々な事を学び撮ろうとする。また、自ら、講習を受ける意欲があるので隷属の首輪は必要ない。


 一日目の午前は、自身の体力の限界を知り、それを超えて走る必要性。敵や獣からの終わりなき逃走を想定した無限マラソンだ。彼らの体力を考慮すれば、三時間走りっ放しでは、もう体力が残っていない。それでも走らされる。


 最初はペース配分を考えて走っても、体を鍛えている人もかなり辛くなる。彼らは、その限界を超える必要性を最初の説いた。


 それでは、残りのやる気の無い隷属の首輪を着けた者たちは、不真面目のレッテルの張られたものだ。将来、有望な冒険者にはまずならないものたち。ギルドの信用を落とす一人になりかねない。怠ける為に、他者を貶め、タカリ、金と暴力と理不尽を覚える。

 そうしたゴロツキになる前に、上下関係を覚えさせると同時に、怠け癖を付けさせない矯正が必要なのだ。


 中には、怠けているのではなく、どうしても理解や知識が追い付いていない新人もいる。個人の差ではあるが、そうした細かい所までは今回の講習では見れない。

 考え方としては、まともに働けない奴はいない。そういう奴は怠けているだけ。本気を出させろ。という考え方だ。

 人には、向き不向きがあるが、中々、自分の適性と冒険者稼業はマッチしない事が往々だ。


「はぁ、俺って教官に向いていないのかもな。まぁ、相談役だし」


 そう言って、空を見上げてポツリと呟く。

 午前は、限界まで走らせた。時間にして6時間以上だ。これでもまだ甘い。森で強力な魔物の個体から森を走破して逃げるのに、6時間以上は掛るケースもある。また足場が悪い。これを機に、基礎体力の不足を実感してくれればと思う。あと、遅刻した奴は、夜に走らせる。勿論、遅刻した分を走らせるのではない。最初から走らせるのだ。


 何故って? 当然、依頼に遅れたら、追い掛ける。午前の分は、遅刻を取り戻すための走り。マイナスからゼロへの行動だ。そして、修行の午後6時から深夜にかけての行動は、ノルマ達成。

 さぁ、精々ガンバレ。これは、マニュアルに決まっている決定事項だ。

 

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