第28話 【ヒント】
ルミナスの牙の証明書を手に、王都から走って山へ向かった。
証明書を持ってきた理由は単純で、帰りに門番や商人の行列を無視して証明書を見せるだけで王都に戻れるからだ。
鍛え上げた体力を活かし、およそ5km先のバルガスト山へ向かう。山の中へ入り奥へ進んでいくと、木造の建物が見えてきた。周囲は柵で囲まれており、建物の隣には畑が二つ。その畑で種を植えているらしい人影があったので声をかけた。
「すみませーん」
「はーい」
振り向いた顔を見ると、マフィスだった。
「あれ、畑やってるんですね」
「そうなんだよ。で、何しに来たの?」
馬車での2週間とは打って変わって、口調が随分と砕けている。これが素のマフィスなのかもしれない。
「王国騎士流剣術についてヒントをもらえればと思って」
「あーあれね。【剣の悪魔】を持ってる君なら、すぐ使いこなせると思うよ。俺の感覚だと、王国騎士流剣術は剣術というより拳術に近い。相手の攻撃を防ぐか避けながら接近して、剣が互いに使いづらい間合いまで入り込んだら、そこから拳で制圧する——そんな流派だね。まあ同じ騎士達に聞けばいいじゃないか。俺はもう引退した身だよ」
引退した手前、あまり深くは教えたくないのだろう。それ以上は聞かないでおいた。
「なるほど、対剣術の接近戦法みたいな感じか……ところで、騎士団長のワンドさんってどのくらい強いんですか?」
「ワンドね。俺とクリスクが息を合わせて奇襲を仕掛けても、百パーセント勝てない。基本的にどれだけ人数が多くても、どれだけ連携が取れたパーティでも、メンバーの中で一番レベルの高い者のレベルに三分の一を足した数値——それを超える相手には勝てないんだよ」
俺は黙って頷いた。
「俺が85、クリスクが80だったから、大体113レベル相当の敵までなら勝算がある。人間のレベル上限は100と言われているから、理論上はワンドにも届く計算だ。ワンドのレベルは100でほぼMAX——でも勝てない。何故か分かるか?」
少し考えてから答えた。
「13レベル分の差を埋める装備か、スキルがあるとか?」
「そう。装備もそうだが、それを遥かに超える量の上級スキルと融合スキルだ。あいつはスキルの図書館と言っていいくらい持っている。体感レベルで言えば150……いや、それ以上かもしれない。とにかく化け物だよ。人類最強は今もあいつだと思う」
「なるほど。ありがとうございました」
「何か気になることがあれば、またいつでも来い。暇だからな、いつでも付き合ってやる。じゃあな」
そう言って別れ、俺は王都へ戻った。王国騎士流剣術の大きなヒントは得られなかったが、小さな手がかりは掴めた気がする。残りの時間は適当に過ごすとしよう。
こうして、俺の休日は終わった。




