第4話 緊急輸血指示
程なくして照明がついた。 非常用電源に切り換わったんだ。
中断していた作業を再開した。 蓄電池が切れるまでに、やれる事を済ませておく必要がある!
――数分後、サイレンの音が聴こえて、近くで停まった。 血液センターの車両だ。 ……普段は、検査室内の装置の駆動音のため、あまり外の音は聞こえないが、今日は必要最小限の装置しか動作していないので、豪雨の中でも良く聴こえた。
ノックの音が響き、救急隊員によく似たユニフォームの、血液センターの職員が、保冷バッグを手に入室した。
……全身、ズブ濡れだ。 外は、バケツをひっくり返したような土砂降りの上、この辺り
全てが停電しており、信号も止まっているそうだ。
血液製剤(輸血用血液)を受け取り、納品伝票と血液製剤の、血液型と製造ナンバーを読み合わせ、捺印した。
こんな日にも、輸血の依頼はひっ切り無しに来るそうだ。
「運転、お気を付けて!」と言って見送った。
――今回は、交差適合試験をしてから血液製剤を手術室に渡す余裕が無い。 このような、患者さんの生命に危機が差し迫っている場合のみ、輸血を先に行って、出来るだけ速やかに、輸血適合試験を後追いで行う事ができるんだ。
『パイロット』と呼ばれる、血液製剤に付属する、血液が小分けになっているチューブを数個切り取り、それに製剤添付の製造ナンバーのシールを貼って、こちらに保管し、製剤を手術室に持って行った。
手術室の横にある中央材料室は、スタッフの控室もあり、数名のヘルパーさんが、心配そうに外を見ながら話をしていた。 本当の修羅場は手術室なので、ここはちょっとしたオアシスになっている。
ヘルパーの滝さんが私に気が付き、モリさんの輸血伝票をくれた。
ドクターが書き込んだ書類は、いつも読めないので解読作業が必要になる。 今日はドクターも慌てていたので、輪をかけて読みにくい(泣) ……さっきの村田師長の内線が無かったら、恐らく暗号解読にかなりの時間を要しただろう。
伝票にチェックして、製剤を渡す。後は、検査室に戻って、後追いになになるが、交差適合試験をやらなくては!




