第3話 雷雨警報
放射線科の橋本が検査室に入って来た。
「雷雨警報観た?」
検査室にはテレビが無いので、観ていない。
はっしーが、スマホの雨雲レーダーを観せてくれた。 病院の真上を雷雲が通過する、最悪のコースだ。
「気をつけてね。 あたし、MRIとか、電源切っとく」と言って、検査室を出た。
放射線科にある『MRI』は、超伝導マグネットを使って断層撮像をする装置だ。内部にあるコイルを、液体ヘリウムでマイナス269℃の『絶対零度』近くまで冷却する事で超伝導を発生させ、超伝導マグネットの地場を維持している。
充分過ぎる程、安全に考慮して造られており、心配には及ばないが、もしも、何らかの事故で、電力が停止してしまうと、液体ヘリウムが瞬時に気化してしまう『クエンチング』が起き、その圧力に耐えられず、『冷却部』を中心に大爆発してしまう危険もゼロでは無いので、雷には気を遣っているのだ。
その点、検査室にある装置は、そこまで危険な装置は、ほぼ無いので、必要以外の検査装置を停めて、落雷に備えた。
……オペ室から、やっと森さんの検体が届いた。Hb8と、まだ危険値では無い。 少し安心した。
輸血検査用の血液を前処理しよう――と、遠心分離機に血液を搭載したとたん、大きな雷鳴が轟き、地震かと思う程の地響きが起きた。 かなり近くに落雷したようだ。
波状攻撃のように、何度も雷が落ちる。その度に、検査室の天井が軋んだ。 こんな近くで雷が鳴るのは初めてで、何度も何度も小さな悲鳴をあげてしまう。
それから約一分後、唐突に照明が消えた!
次いで、ブレーカーが落ちたような『バチン』と言う音と共に、『キューン』と、断末魔の音を残して、全ての装置が停止した!




