第1話 読影医
※ この物語はフィクションであり、実在の人物、団体などとは関係ありません
「トノマイチさ〜ん、トノマイチ コフミさ〜ん」
妙齢の女性が立ち上がった。
一緒に超音波検査室に向う。
歩きながら……「『殿舞池』さん……ですよね? 読みは間違い無いですか?」
「はい、珍しい名前でしょ? 『デンブイケ』とか『トノブチ』とか読まれるんですよ〜」
「それだと、呼ばれても気付かないかも知れませんね」 ……と、患者さんと笑い合った。
病院、特に検査室は『名前』を多く扱う部署だ。
検査の種類によっては、お一人で十数本採血する場合もあり、カルテ番号や名前を間違えたりすると、訂正に手間がかかる事もある。
その為、患者名は、カタカナを使って記載する。
今回も、伝票がカタカナだったので、スムーズに呼び出せた。
超音波検査室に入ると、普段は居ないドクターが座っている。
通常、エコー検査は、私たち臨床検査技師が行うが、週に何回か『読影医』の先生が来院する。
読影医……『放射線科医』とも呼ばれる、画像検査の診断のエキスパートだ。
臨床検査技師は、エコー検査は可能だが、保健婦助産婦看護婦法で、診断は行えない規則になっている。
その為、医師の中でも特に画像検査…エコーや、CT、MRI等の診断技術を持つ『読影医』の必要性が出てくるのだ。
……この患者さんは、乳房の検査だ。
上半身のみ脱衣してもらい、タオルをかける。
準備が出来たら、読影医に直接検査して貰う。
「先生、お願いします。」
「はいはいはい〜っ、では、検査しますよ〜。 押して痛かったら言って下さいね〜」
と、ゼリーを塗りながら、探触子を検査部位に当てる。
軽い口調で患者さんの体位を換えつつ、検査を進めて行く。
私はエコーの初心者なので、見惚れながら、結果を入れる封筒の記名や、次の方の下準備等をやっていた。




