↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
244/248

第9話 微かな光

これは一体、どういう事……?


 『チュートリアル』は初歩の初歩で、誰でもクリア出来るそうだ。 それすらクリア出来ない私は、人並み以下って事じゃん(泣)


 こんな状態では、優勝どころか予選落ちしちゃう! 予選があるかどうかは判らないけど!


「……やっぱり私、ゲームはダメだわ……これ、明日返してくる……」


 私は半ベソをかきながらゴーグルを片付け始めた。


 それまでバカ笑いしていた兄貴の表情が、コロッと変わった。


「真優《まゆ》! ちょっと待て! それは待て!」


「返したく無いからって止めないで! 私がこれを貰ったのは『人事課長へのハナムケ』の為なんだから、それが出来ない私は返すしか無いじゃん!」


「違う違う! 正直『返したく無い』って言ったら嘘になるけど、それは抜きにしても、お前の太刀筋《たちすじ》は悪くない。 剣道三段の俺が言うんだから間違いない!」


 確かに兄貴は、高校生まで剣道の道場に通っていて段持ちだ。


「ほんと? クスンッ ……それ……信じて良いの……?」


 私は泣きながら、兄貴を上目遣いで見てしまった!


 ……わ、我ながら気持ち悪い!


「本当だよ! ……ただ、俺の見立てでは、お前の剣は良くも悪くも『見世物』なんだ」


「見世物……?」


「そう。 『区民劇』ならそれで充分だが、VRゲームは言い方を変えれば『実戦』……しかも『真剣試合』と同じだからな」


 ……!


 確かに……一理あるかも!


 舞台のお稽古では、決まった型《かた》で剣と剣を安全に合わせたり、敵役《かたきやく》とアイコンタクトをしたりしながら、観客に迫力ある『見せ方』を研究し、練習している。 『速さ』より『演技力』が重視されるんだ。


 しかしVRゲームは、どれだけ本物《リアル》に近付けるかを追求している。


 つまり『殺陣《たて》』と『VR』は、似て非なるものなんだ。


 その後、兄貴が『HARD MODE』での闘いを見せてくれた。


 もうちょっとのところで惜敗してしまったが、『ミラーリング』で観た映像は、我が兄とは思えないくらいに見事な腕前だった!


 この際、背に腹は代えられない!


 私は兄に頭を下げて、『剣道』を教えて欲しい……と懇願した!


 兄貴は腕組みをして、しばらく天井を見上げていたが……


「……俺、人に教えた事なんて無いぞ?」


「それでもいい! お兄ちゃんしか頼れる人がいないの!」


(※ここから暫く小芝居が続きます。 ご注意下さい)


 兄はゆっくりと目を閉じ、重々しく頷いた。


「……よかろう。 ただし、俺の稽古は厳しいぞ。 泣き言は一切許さぬ」


「は、はい! お兄様!」


「大会まで日が無い。 明日から毎晩、仕事が終わったら稽古だ!」


「心得ました、お兄様!」


「それから……」


「はい!」


「稽古が終わったら、VRで少し遊ばせてくれ」


 ……台無しだよっ!


「真一《しんいち》〜、お母さんもう眠いから早くご飯食べて〜〜」


「やべっ、忘れてた! は〜い!」


 シリアスムードから、一気にホームドラマみたいになっちゃった(笑)


 でも……


 あのゲーム大好きな兄貴が、私の為に先生になってくれるんだ。 ほんの少しだけど、微かな希望の光が見えた気がした。


「私も先に寝るね! お休み〜」


「お休み〜」


 台所《だいどこ》を出る時、兄の小さな呟きが聞こえた。


「ん!? なんか……俺のカニクリームコロッケ少なくね?」


 あっ! ……てへっ


 (兄の呟きと私の『てへっ』の理由は……前話をご参照下さい)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。