第12話『略奪』
略……奪……?
私に、そんな恐ろしい事ができる訳が無い!
そ、それに、そもそも『略奪』って、誰かから奪い取ること……でしょ!?
奪い取る?
……!
……って事は……
要さんは……誰かのもの……って事……?
私は、はっしーに、ラインで真実を聴いた。
要さんには、奥様と3人のお子様が居るそうだ。
今回の留学も、一番下のお子様が小学校に入学し、手が離れたので、育児を奥様に頼んで、留学を決断した……との事だった。
私は、トイレで声が出ないように口を抑えながら嗤った! ……自分のバカさ加減を嗤い飛ばした!
ホント、ばかだ。
どうしょうもない……ばか!
嗤った後、直ぐに嗚咽を上げて泣く……と思ったが、意外や意外、その後、涙は出なかった。
自分のばかさ加減に、自分で呆れてしまったんだと思う。
涙が止まれば、今がチャンスだ! 急いで鏡を見ながら化粧を直す。
ちょっと眼が腫れてるけど、誤魔化すしか無い!
これからは、要さんにはなんの興味も無い仮面を被るんだ!
速足で、はっしーと要さんが座っている席に戻り「すみません! ちょっと気分が悪くなっちゃって……」と、モゴモゴと言い訳をした。
……かなりの時間中座していたが、さすが はっしー! 舌先三寸で時間繋ぎをしてくれていた。
要さんが「遥さん! 橋本さんって面白い方ですね! レントゲン検査の人にしておくのは勿体無いなあ〜!」
そして「俺の知り合いに、相方に逃げられた漫才師がいるんだけど、組む気ありません?」と、本気ではっしーに聞いている。
当のはっしーは「私……まだ学生なので……」と、丁重にお断りしていた。
要さんの楽しそうな笑顔と、はっしーの照れた笑顔が何だか嬉しくて『3人で自撮り写真を撮りたい』と提案した。
自撮りをしていたら、店員さんが気付いてくれて、とても素敵なカットを撮って下さった。
***
この写真は、何年も経った今でもSDカードに残してある。 ……勿論、憧れの『アイドル』と記念撮影したのと同じ気持ちで……だ。
***
こうして私の初恋は、とんだ茶番で終わったのでした。
さて、心機一転!
次回、いよいよ区民劇『カミツレのブーケ』! 本番当日です! 乞うご期待!




