第11話 支離滅裂
……えっ?
要さんの言葉は聴こえたが、意味が判らない……。
なに? この後、何処かに行くの?
すぐに……すぐに帰って来るのよ……ね?
だ、だって、私達の舞台、これからだし、要さんが何処かへ行っちゃったら……誰がガーベラーの代わりを演るの? 要さん以外にガーベラーを演れる人は、居ないんだよ?
あっ……そ……そうか! 公演が……終わったら……か……。
……留学?
ニューヨークに留学ってなに?
え? 公演が終わったら……ニューヨークに……留学……!?
お別れなの?
公演が終わったら……お別れ? サヨナラ?
イヤだ……!
イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ!
要さんが何処かへ行くなら、私も行く!
着いて行く!
ニューヨークでも、宇宙の果てでも、海の底でも! 何処へだって着いて行く!
だから……何処にも行かないでっ!
……要さんが言った言葉を即座に理解した自分と、認めたくない自分が脳の中で葛藤して、思考が滅裂になった。
「ちょっと……失礼します……」と言って、トイレに駆け込んだ。
トイレで私は『サム』に話しかけた。
***
実は、私は漫画家になる……という夢を両親に反対され、登校拒否をしていた事があった。 ……その頃から、辛い事があると、親指に顔を書いて、それに話しかけて現実逃避をする『ひとり遊び』をしていた。 ……その、親指のキャラクターが『サム』だ。サムとなら、一心同体。 どんな事でも相談出来る、強い味方だ。(本編 第2章 病理組織診 第6話『サム』・第10章『名探偵サム』等々、たまに登場しているのでご参照ください)
***
……サム! 私、どうしよう!
この『カミツレのブーケ』の公演が終わったら……要さんが居なくなっちゃう!
「落ち着け真優。 要くんは『ニューヨークに留学に行く』と言っただけで『結婚する』といった訳じゃない。 もしお前の気持ちが変わらず、要くんもお前が好きなら、留学から帰って来てからでも、お付き合いを始めれば良いじゃないか」
でも! 私、自信無いし、離れちゃったら、そのままお別れになると思う……。 そんな予感がする。
「『女のカン』ってヤツか? 今迄、お前の女のカンが当たった事があったか?」
な、無いけど……。 でも、今回は何故か判る。 これで別れたら……本当にサヨナラになっちゃう……って。
『ブーッ、ブーッ』!
スマホが振動した。
……はっしーからのラインだ。
『まゆ』
『先に言っておくね』
『私は』
『まゆの決断なら』
『どんな事でも』
『協力するよ!』
『だから』
『安心して』
『1つだけ答えて』
……私は、次の文字に凍り付いた!
『略奪愛……出来る?』




