第9話 殺気!
「ふっ、ガーベラー、貴様、考えるより先に身体が動きおったな!」
梅郷先生が、手にした剣の柄で要さんの心窩部に当身をくらわせ、要さんが呻き声と共に倒れ込んだ。
「カモミーユッ!」
続いて梅郷先生が、私に剣を構えた!
ええ〜〜っ! 私、台詞抜かしただけで切られちゃうの〜? 厳し過ぎやしない〜!?
「は、はい!」
私も、敵わないないまでも、お相手をせねばなるまい!
「ご、ござんなれ」と腰の刀に手をかける。
「そこ退けぇ!」梅郷先生の剣が唸りを上げ、私は正中矢状断された!
本当に斬られたっ?
いや、それはないだろうが、少なくとも、梅郷先生が飛ばした殺気に当てられ、膝から崩れ落ちた!
む……無念。
ガクッ。
倒れ込んだ私の立ち位置に梅郷先生が仁王立ちになり「ふ〜む」と言って、何かを目測している。
「……って、先生、どうされました?」と要さんがムクッと起き上がり、何事も無かったかのように質問した。
「いやね、今さっきのカモミーユの動きが非常に良かったので、立ち位置を変えて、台詞もさっきみたいにカットした方が良さそうな気がしてさ」と、いつもの顔に戻って言った。
も〜! 演技上手の人達のノリツッコミは迫力満点でコワイヨー(泣)
先生が「遥さん、立ち位置を変えてやり直して貰えるかい? 『下手』から回り込んで、この位置で止まり、ガーベラーと二人同時に……45度左回りで『見え切り』……ちょっとやってみて! あ、さっきみたいに『私は国民の……』の台詞はカットで!」
「はい!」と要さんと私が同時に返事をして、先生の指示通りに動いた。
それを見て、先生が満足そうに頷き、はっしーに向かって言った。
「橋本さん、お客様の視点で観て、どうだった? 同じシーンでもだいぶ変わって観えたんじゃない?」
「は、はい! 確かに、左右が変わるだけで……何となく……情勢が『危うい』って伝わりました!」
さすがはっしー、オールラウンダーだ! お芝居まで精通してるとは!
要さんが振り返り、私に微笑んでくれて、私も、笑顔を返した。
そろそろお腹が空いて来て、お昼休憩をとる事にした。
奥様が私に「このカード使って、3人で何か食べて来て! 14時から再開しましょう」と言って、クレジットカードを渡してくれた。
「奥様や先生は一緒に行かれないんですか?」と聴くと「あの人、外食、苦手なの。 気にしないで行って来て〜」と言ってくれた。
はっしーが「私……そろそろ失礼しようかと」と言うと、先生が「いや! それは、いかん! せめて飯だけでも食ってって下さい!」と引き留めてくれた。
……多分はっしーは、私と要さんを二人にしてくれようとしているんだと思う。 でもそれこそ『それは、いかん!』だ! 私、要さんと二人だけで食事なんて行ったら、何も喉を通らないよ!
「はっしーに帰られちゃったら、私、歩いて帰る事になっちゃうから、お願い! 一緒に行こ!」とお願いすると「じゃあ、遠慮なく、ご馳走になります」と、はっしーが先生と奥様に頭を下げた。
「良かった! メニュー全て食い尽くすつもりで行って来て下さい」と先生が笑いながら言った。
要さんが「センセ〜、言い過ぎ! 俺たち『軍隊アリ』じゃ無いんだから」と言ったので、思わず、はっしーと一緒に吹き出してしまった。
こうして私は、産まれて初めて、好きな人との『お食事会』に臨む事になったのだ!
き、き、緊張〜〜!




