↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
166/249

第1話 見学

 その日……私は区民劇団『劇団あみーご』の見学に来ていた。


 十数人の団員の方《かた》が、台本を片手にお稽古をしている。 ……普段はあまりギャラリーが居ないらしく、今日は特に皆さん張り切っている……と、主催者で演出家でもある『梅郷《うめさと》先生』が仰《おっしゃ》った。


 さて、何故《なぜ》私が劇団の見学に来ているのか? 当然、女優さんに転職する訳ではない。


 前のエピソードにも書いたが、臨床検査技師が検査結果を患者さんに言う事は、法律で禁止されている。 


 結果に問題が無い時は良いのだが、異常のある患者さんの場合、私は直《す》ぐ顔に出てしまうので、バレてしまう危険がある!


 その為、ここは一番! 演技力を身に付けて、私の表情から必死に結果を読み取ろうとしている患者さんの前で『ポーカーフェイス』な『ガラスの仮面』を被ろう! と一念発起した訳だ。


 更に更に、それに加えて、実は私は、未《いま》だに『漫画家』になる夢を諦めてはいない。


 『漫画を描く』と言うことは即《すなわ》ち『キャラクターに演技をさせる』のと同じ事なので、演技の勉強は、いつか役に立つのでは? との考えもあったんだ。


 お稽古はあちこち飛び飛びだし、途中から参加した事もあり、ストーリーは良く判らないが、皆さん活き活きとしていて、とても楽しそうだった。


 仕事帰りに本屋さんで漫画を探す位《くらい》しか楽しみのない私の目には、とても羨ましく映った。


 そんなこんなで、あっという間に、終了の時間になってしまった。


「遥《はるか》……さん、如何《いかが》でした? もし良ければ『仮入団』してみませんか?」と、梅郷先生が仰った。


「あ、あの……私、学芸会でも劇なんてやった事無いのですけど………大丈夫ですか?」と、恐る恐る聴いてみた。


 すると、団員でもある梅郷先生の奥さんが「うちの団員なんて、みーんなそうよ! 学生時代に日陰に居《い》たから、私たちの劇団に『輝き』を求めて集まって来た人ばかりよ〜!」……と、お腹からの素晴らしい発声で言った。


 その言葉を聞いていた団員の方《かた》が「なんだよ~! それじゃまるで、俺たち『蛾《が》』みたいじゃん」と言いながら壁に張り付いたので、その姿を見て、みんなが笑った。 私も面白くて、予想以上に、お腹からの素晴らしい発声で笑ってしまった。


 梅郷先生が皆さんを集め……


「今日、見学に来てくれた『遥 真優《まゆ》』さんだ。 入団してくれるそうだぞ!」……と、奥様の倍くらいの大きな声で紹介してくれた。


『パチパチ』『ひゅ~ひゅ~』……と、盛大に歓迎されてしまい、ほっぺが熱くなるのを感じた。 ……そして『まだ、はっきり決めた訳では無いのですが……』と、言えなくなってしまった。


「よ、よ、宜しくお願い致します」……と頭を下げると、皆さんの祝福の拍手が、より大きくなった。


 そして! 更に驚くべき言葉が、梅郷先生から発せられた!


「遥さんには、今回の劇のヒロイン『カモミーユ姫』を演《や》って貰う事にした!」


えええええええええええええええええ~~~~~~~~~~~!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。