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第10話 降格

 PCR検査センター業務停止の危機を乗り越えたあの日から半年……そのニュースは突然日本中を駆け巡った。


 あれほどの猛威を振るい続けていた国内のサターンウィルス新規感染者が激減し、病床ひっ迫も解消され始めたと言う。


 国の『サターンウィルス感染症対策分科会』の発表によると、大規模な行動自粛や国民一人ひとりの感染症予防対策の実行、更に有効なワクチン接種などが奏功したのではないか……との事だった。


 確かに、現時点でも私や私の家族、陽向さんとそのご家族、また町野中央病院の検査室の皆さん方も、サターンウィルスに感染していない。


 これは奇跡などではなく、基本に忠実な感染症対策を生真面目に続けた成果に他ならない。

(あ、運もあったかも(汗))


 ま、まあ、これにより新型サターンウィルスの感染法上の扱いが、2類相当から5類に引き下げられる事になった!


 これは、某キングダ◯という私が沼っている漫画に例えると『五千人将』が『千人将』に降格になったようなものだ。


 コホン! さて、ちょっとだけ説明すると、細菌やウィルスの中でも『微生物の感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律』通称『感染症法』に定められている病原菌及び病原ウィルス、寄生虫などは、その危険度を1〜5類という名称で分け、それぞれに合った対処法を定めている。


 新型サターンウィルスは明らかに既存のサターンウィルスとは違い、爆発的な感染力と重篤な症状で危険な感染症と判定され『五千人将』クラス(←くどい)にランク分けされていたんだ。


 数年が過ぎ、上記のように新規感染者も減り、ワクチンも開発され、ほぼ『季節性インフルエンザ』と同等の扱いで良いだろう……との判断がなされたため『千人将』に(←……)降格されたのだ。


「遥さん、やっと……この日が来たね」


「はい、やっと」


 PCR検査センターでの業務が一段落した時、陽向さんと2人で力が抜けたようにイスに腰掛けボソッと声を掛け合った。


 この短い会話だけで充分だった。


『嬉しい』とか『悲しい』とかいう感情を出して話をするには、あまりにも長く、そして色々な事がありすぎたから……だ。


『プルルルルー プルルルルー』


 ……外線電話だ。


「はい、PCRけ……あ、部長! ニュース見ましたよ……はい……はい……」


 陽向さんは私たちの上司である大東風部長と暫く話していた。


 どうやら、PCR検査センターの今後についての話のようだ。


 ……耳をそばだてて、陽向さんの会話を聴いているのも失礼だと思い、私は再び別の業務を始めたが、やはり気になるのは今後の事だ。


 町野中央病院の検査室に帰れるのか? 


 または何か別の業務に異動になるのか……?


 ……


 …………


 ……!


 ん!?


 む……胸が……


 左胸が……痛い……!

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