表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
115/116

第4話 激昂

 そんな陽向さんの姿をの当たりにした私は……


 無性に腹が立ってきた!


 ……もちろん、私の怒りは陽向さんが涙を流している姿に対して向けたものでは無い。


 まずは、陽向さんに何もしてあげられない無力な自分に!


 次に、陽向さんを苦しめる原因を作った災害に!


 次に、下らない戦争を始めた、どっかの国では『偉い』と言われているダメダメオヤジに!


 次に、輸入に頼り切っているこの国に!


 新型サターンウィルスに!


 すぐに感染する軟弱な人類に!


 そして何より、陽向さんたちを逆恨みし、憎しみを綴った遺書を残して死んだと言う自分勝手な自殺者に対してのいきどおりを感じたんだ!


 その原因は『天災』であり、陽向さんたちを責めるのは全くの筋違いでしょうが! 


 そんな怨みを込めた手紙を書く元気があったら、お子さんの悲劇を教訓にして『クラッシュ症候群』の恐ろしさを啓蒙し、同じ悲しみを繰り返さないようにすべきでしょう!


 死んでる暇なんて無い!


 ……更に、とばっちりになってしまって申し訳無いけれど、その呪縛にカラまれて自らの価値を見失ってしまった陽向さんにまで怒りが及んでしまったんだ!


『 ド ゴ ン ッ 』!


 ……! こんな事は生まれて初めてだった!


 普段、あまり怒った事が無い私は、やり場の無い怒りを机に向け、力任せに殴った!



 大きな音と供に、手に衝撃を感じたが、不思議と痛みを感じなかった。

 

 私は怒りに打ち震えながら振り返り、陽向さんをキッと睨みつけた!


 陽向さんは私の剣幕に驚いているようで、涙を拭うのも忘れ、赤く腫らした目を見開いたまま固まっている!



 ……私も女子の端くれなので、本当は陽向さんの奇麗な涙に同情して、抱き合って一緒に泣いてあげた方が良かったのかも知れない。


 でも私は、ハラワタが煮えくり返り、とてもじゃ無いけど同情なんて出来なかった。



『やっぱり』? 『だった』?


 はぁっ!?


 陽向さんともあろうお人が


 何 バ カ な 事 言 っ て ん の ?


 私たち、今でもがんばってるじゃん! 


 私たち、まだ全然終わって無いじゃん!

 

 そのあと私の口から出た言葉は、今考えても、私らしからぬものだった!


「……みんな狂ってる! この世界は全て狂ってます! サターンウィルスも! 人類も! 国も! 私も! ……もちろん貴方あなたもです、陽向さん! こんな狂った世界、滅びちゃった方が良いっ!」


『 ゴ ッ 』! 私はもう一度、力任せに机を殴りつけた!


 今度は鈍い音と供に手に激痛が走ったが、私の怒りは収まらなかった!


「こんな世界、核戦争や伝染病で、キレイサッパリ消えちゃえばいいんだ!」

 

 私は、怒りの矛先を陽向さんに向け、固まっているその両肩を強く掴み、更に言い放った!


「でもね、陽向さんっ! 今はまだその時じゃない! 貴方あなたも! 私も! まだまだ終っていないっ!」


 ……右手の痛みが強くなり、墨台さんの肩から手を離すと、そこには私の血の跡が残っていた!


 机に八つ当たりした部分の皮膚と手袋が裂け、鮮血がはみ出していた。


 私はその手を強く握りしめ、墨台さんの前に突き出しながら、声が涸れるほどの大きな声でこう言った


「私は血まみれになってもっ! 泥まみれになってもっ! 貴方あなたが言ってくれた『防波堤』としてっ! 最後の最後の最期まで、足掻きます! それこそが私の『臨床検査技師』としての誇りであり使命だから!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ