薬箱の奇跡 11
光の看病をした。
犬っぽい妖怪に取り憑かれたせい。
とても可哀想。
だから、私は看病する。
今もつらそう。
私が光のお姉さんだったら、こんなまどろっこしいことしなくても良かったのに。
早く元気になってね。
†☆†☆†
「これでいい?」
「ええ。ありがとう」
結姫は柔らかく微笑んだ。こうしてみれば、結姫ってかわいいよねー。
本当は烏之瑪に預ける予定だったけれど、光の家に遊びに来たついでと言うことでたった今、日記を渡した所。光が飲み物を取りに行った隙にこっそりと押し入れから出て、結姫に会った。
因みに烏之瑪は縁側。だから結姫が障子を開いて烏之瑪を呼び込む。
『全く。今回は余計な騒動が絡んだな』
「そうねぇ。はい、日記。戻ってきたから、次に書いてもらう妖探しに行ってらっしゃい」
『……全く、人使いの荒い』
「人じゃないでしょう? カラスなんだから」
やれやれといった体で、烏之瑪は部屋に入って早々、羽ばたいた。舞い上がって一回旋回してから部屋を飛び出していく、と。
「うわ、カラス!?」
ガチャンとガラスの音を響かせて、光が声を上げた。あや、戻ってきちゃったのね。
「先輩! なんでまたカラスが入ってきているんですか!」
「気にしなーい、気にしない。そんな小さいことを気にしたら世界が終わっちゃうわ」
「終わりませんよ!?」
光、それは私も思うよ。同意見だよ。
結姫はやっぱりそんな事などお構いなしだ。光からお茶を受け取って、ちびちびと飲んでいる。
ああ、平和だなあ。
「そういや、先輩。俺、寝込んでいる間少し不思議な夢を見ましたよ」
「あら。どんな夢?」
「なんか、手のひらサイズのちっこい日本人形っぽいのが、看病してくれました」
私ははっと顔を上げた。机の上にいる私は思わず、今まさに座り込もうとした光に飛びつく。
「あぁ、嬉しい。視えていたのね!」
たった一回でも、嬉しい。とても嬉しい。
結姫がますます目を細くして微笑む。結姫、私の心、今すごく温かい! 嬉しい、嬉しい……!
「素敵な夢ね」
「そうですか? どちらかというと奇妙な夢じゃありません? 動けない自分を日本人形が看病するんですよ?」
「あら、日本人形じゃないかもしれないわ。もしかしたら、ね……」
そうなのか。日本人形なのか私。私、光にそう思われたのか。
意外な言葉にちょっと半眼になって光を見つめていれば、結姫が光に視線を向けるようにして私に視線を向けた。
「元気になって良かったわね」
それは光に対するお見舞いの言葉のようであり、私に対する安心の言葉であり。
どっちとも取れる言葉だけれど。───私は敢えて後者で受け取った。
「ありがと、結姫」
私は素直にお礼を言った。
一話、完結ということで。




