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物語る日記帳  作者: 采火
本編
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12/63

薬箱の奇跡 11


 光の看病をした。


 犬っぽい妖怪に取り憑かれたせい。


 とても可哀想。


 だから、私は看病する。


 今もつらそう。


 私が光のお姉さんだったら、こんなまどろっこしいことしなくても良かったのに。


 早く元気になってね。



†☆†☆†



「これでいい?」

「ええ。ありがとう」


 結姫は柔らかく微笑んだ。こうしてみれば、結姫ってかわいいよねー。

 本当は烏之瑪に預ける予定だったけれど、光の家に遊びに来たついでと言うことでたった今、日記を渡した所。光が飲み物を取りに行った隙にこっそりと押し入れから出て、結姫に会った。

 因みに烏之瑪は縁側。だから結姫が障子を開いて烏之瑪を呼び込む。


『全く。今回は余計な騒動が絡んだな』

「そうねぇ。はい、日記。戻ってきたから、次に書いてもらう妖探しに行ってらっしゃい」

『……全く、人使いの荒い』

「人じゃないでしょう? カラスなんだから」


 やれやれといった体で、烏之瑪は部屋に入って早々、羽ばたいた。舞い上がって一回旋回してから部屋を飛び出していく、と。


「うわ、カラス!?」


 ガチャンとガラスの音を響かせて、光が声を上げた。あや、戻ってきちゃったのね。


「先輩! なんでまたカラスが入ってきているんですか!」

「気にしなーい、気にしない。そんな小さいことを気にしたら世界が終わっちゃうわ」

「終わりませんよ!?」


 光、それは私も思うよ。同意見だよ。

 結姫はやっぱりそんな事などお構いなしだ。光からお茶を受け取って、ちびちびと飲んでいる。

 ああ、平和だなあ。


「そういや、先輩。俺、寝込んでいる間少し不思議な夢を見ましたよ」

「あら。どんな夢?」

「なんか、手のひらサイズのちっこい日本人形っぽいのが、看病してくれました」


 私ははっと顔を上げた。机の上にいる私は思わず、今まさに座り込もうとした光に飛びつく。


「あぁ、嬉しい。視えていたのね!」


 たった一回でも、嬉しい。とても嬉しい。

 結姫がますます目を細くして微笑む。結姫、私の心、今すごく温かい! 嬉しい、嬉しい……!


「素敵な夢ね」

「そうですか? どちらかというと奇妙な夢じゃありません? 動けない自分を日本人形が看病するんですよ?」

「あら、日本人形じゃないかもしれないわ。もしかしたら、ね……」


 そうなのか。日本人形なのか私。私、光にそう思われたのか。

 意外な言葉にちょっと半眼になって光を見つめていれば、結姫が光に視線を向けるようにして私に視線を向けた。


「元気になって良かったわね」


 それは光に対するお見舞いの言葉のようであり、私に対する安心の言葉であり。

 どっちとも取れる言葉だけれど。───私は敢えて後者で受け取った。


「ありがと、結姫」


 私は素直にお礼を言った。

 一話、完結ということで。

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