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嵐一過 Clear Sky After Storm

ライルとアリアの帰りを待つ四人。


 ティナが何やら落ち着きが無い。彼女は、しきりにもそもそと立ち上がったり、少し奥まで様子を見に行ったり、かと思うと大きな溜息を一人でついている。


ホークスが見かねて、そんな様子のティナに声をかけた。


「大丈夫だって。旦那も戻って来ねえって事は、アリアを見つけたんだろうさ。それで嵐が来たから、二人してどこかで雨宿りでもしてるんだろう」


「それにしたって、遅すぎるじゃない。もしかして、何かあったのかも……」


「まあ、俺はティナが心配するような事は何もねえとは思うがな。まあ、ちっと手分けして捜してみるか」


再び二人を捜す四人であったが、二人の姿は見あたらなかった。やきもきするティナであった。



 その日も陽が傾こうかという頃合い、ライルとアリアが森の奥から姿を現した。ホークスが気づいて、二人に声をかける。


「よう! そろってお帰りとは隅におけねえな。……で、やっちまったのか? え?」


ニヤニヤと問いかけるホークスに、アリアは顔を赤らめてしまう。そういう事があった訳ではないのだが、アリアの心がライルに近づいてしまった事には変わりないのだ。


そんな下品な冗談に、すかさずティナの鉄拳がホークスに飛ぶ。


「そんな訳ないでしょうがっ!! 大丈夫なの、二人とも?」

「はい。……ごめんなさい、皆さん」


アリアは深々と一同に頭を下げる。ライルが言葉を続ける。


「ああ、俺が熱出しちまって、遅くなったんだ。アリアが看病してくれた。もう、なんとか大丈夫だ」

「そうだったんだ。ふうん……」


ティナがライルの頭からつま先まで見回している。そして、ちらちらとアリアの顔を伺っている。


それに気づいた懲りないホークスが、再び口を開いた。


「『嵐の夜を二人きりで過ごした上、優しい少女の献身的な看護を受けた男。起きあがる男に、大丈夫ですかと少女が顔をのぞき込む。見つめ合う二人。その唇が近づいてゆく。お互い腕をからめあい、人里離れた静かな森の中、二人の情熱は……』」


ティナの鉄拳が再びホークスを捕らえる。その拳の勢いはハンパではない。


「じょ、冗談だってばよ。おお、痛え」

「妙な事ほざいてんじゃない!! 全くもうっ……。そんな訳……ないよね?」


ちょっと心配そうに、ライルの顔を覗き込むティナであった。


「病み上がりで、そんな元気ねえよ。俺がもし襲いかかっても、今ならアリアにも倒せるぜ。まあ、神様が嫌いな俺は、アリアに嫌われてるから、そんな事にはならねえさ」


肩をすくめるライルであった。


「あの……」


 アリアはうつむいて、無意識にその胸の前で左手を握りしめている。自分がそんな風にライルに思われている事に、なぜか胸がたまらなく苦しいのだ。そんな様子のアリアに、ティナは気づいていた。ティナの胸にも、複雑な想いが走る。


「ま、まあ、とにかく二人とも無事でよかったですよ。さあ、行きましょう」


魔術師ノエルが、アリアとティナの空気を敏感に感じ取って、取り繕おうとする。


「うむ。早く次の街で酒が飲みたい。あそこには、上等の地酒がある。あそこでしか味わうことができんのだ」


ギリアムは、諸国を遊歴中、あちこちの酒を飲み歩いていたらしい。


「地酒か! いいな。早く行こうぜ」


 ライルがティナの肩に手を置いて、そうせかす。ティナは肩をすくめる。昨日、何かあったとしても、ライルはライルで変わりないようだ。


「そうね。行きましょう、アリア」


ティナはにっこりとアリアに手を差し出す。


「はい!」


アリアは、ティナの手をうれしそうに握ると、再び仲間達の輪の中へと飛び込んでいった。



 ホークスが、ティナに殴られた顎を手でさすりながら、ニヤリと微笑んでいる。ライルとアリアをからかったのは、この男なりの優しさなのだ。はっきりさせてやって、ティナの心を落ち着かせてやりたかったのである。器用なようでいて、不器用な男であった。ティナはそんなホークスの気持ちに全く気づいていない。


 ノエルだけが、そんな皆の全ての心の動きを察知していたが、彼はそうした事に全く興味がない男だ。彼には、そのような事よりもずっと心惹かれる面白い事があるのだ。相変わらず、生真面目な顔をして歩きながら、呪文書をペラペラとめくっている。


雲雀がさえずっている。


青く綺麗に晴れ上がった空が、道行く彼らの頭上に、どこまでも広がっているのであった。



~~~~第四話【修道女アリア】終幕~~~~


これで、六人そろいました!

神を信じるアリアと、神に背を向けているライル。


『神様』に対して、それぞれの気持ちが対立する訳ですが……

自分は、どちらの考えも正しく、またどちらも間違っていると思ってます。

(変ですかねえ?)


さてさて、ティナとアリア、そしてライルとホークス。

ちょっと微妙な関係です。どうなる事やら……。


次回は【人喰い虎カイエン】。


一行が立ち寄った街で、サーカスが開かれております。

サーカス見物を楽しんだ翌日、そのサーカスのトラが街に逃げ出して…。

実は、その事件にはかなり危険な裏が隠されていました。


シティー・アドベンチャーになります。


盗賊ホークス、本領発揮です!

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