第五話 攻守転換
注意
この文章は作者が書いた文章をAIに添削してもらった上で投稿しています。
間違っても作者一人で作ったものではありませんので勘違いなきようお願いいたします。
トレーニング開始。
僕はハチローから渡された、
トレーニングメニューの紙へ目を通す。
上から順に――
ジャブ。
ストレート。
フック。
アッパー。
ウィービング。
パーリング。
『お前、素人だからほとんどわかんねえだろ』
『まあ……
上四つくらいは、さすがに覚えたけど……』
ハチローは僕の目をじっと見つめた。
『試合の日程、
ハチブンジから聞いてるか?』
僕は首を横に振る。
『まだだ』
『そうか』
ハチローは短く頷いた。
『正式決定はまだだが、
おそらく一ヶ月後。
遅くても二日以内には決まる』
『一ヶ月後か……』
『そして相手は――
《アイスマン》フラッガ』
その名前を聞いた瞬間、
空気が少しだけ重くなった気がした。
『知る人ぞ知る、
ジャブの名手だ』
『ジャブの名手?』
ハチローは構えを取り、
鋭く前手を突き出した。
――シュッ。
空気を裂く音。
『これが基本のジャブ』
『……ジャブねえ』
『ああ。
お前が勝つには、
まずこの“ジャブ”を攻略しなきゃならねえ』
僕はぼんやり考える。
(まあ……
前回もなんとかなったしな)
だが――
『お前、
前と同じ戦い方で、
なんとかなると思ったろ』
『……え?』
心臓が跳ねた。
図星だった。
僕は思わず肩を震わせる。
『わかりやすいなお前』
ハチローは鼻で笑った。
『痛みには鈍いくせに、
感情は顔に出やがる』
『そうなのか?』
『経験でわかる。
長年この業界にいるとな』
ハチローはニヤリと笑う。
その目だけは、
獲物を見据える獣みたいに鋭かった。
『で、本題だ』
彼は指を一本立てる。
『お前の弱点は明確。
ディフェンス、オフェンス……
その他全部』
『全部じゃん』
『だからこそ厳しくいく』
ハチローは言い切った。
『今回お前に叩き込むのは、
“ジャブ”と“パーリング”だ』
『パーリング?』
『相手の拳を受け流す技術だ。
フラッガ相手には必須の防御技になる』
『へえ……』
『だが、その前に基礎をやる』
ハチローは僕を睨みつけた。
そして――
『さあ、始めるぞ!!!』
怒号がジム中に響いた。
◆
僕はハチローの指示に従い、
ジャブとストレートを交互にミットへ打ち込む。
(っていうか、
どこから出したんだそのミット……)
そんな感想が浮かぶ間もなく、
ハチローが口を開いた。
『まずは所感を聞こうか。
ジャブとストレート、
打ってみてどう思う?』
『正直、よくわかんない』
『テキトーだな。
じゃあ次は攻撃仕掛けるから、
避けてみろ』
『は?』
僕は眉をひそめながら、
言われるまま拳を打ち込む。
次の瞬間――
ミットが、
僕の額スレスレをかすめた。
『おいおい、危機感がねえな。
攻撃はいつ飛んでくるかわからねえ!
常に相手の攻撃に備えろ!!』
『ちょっ――』
ハチローは呆れたようにため息を吐く。
『ったく、とろいやつだな。
まあいい。
まずは一回、地獄を見ろ』
そこからだった。
僕はひたすら、
ハチローのミットをかわし続ける。
かわす。
かわす。
ひたすら、かわす。
――だが。
次第にミットは、
頬をかすめ、
肩を叩き、
少しずつ僕を削り始めた。
『おいおい、
動きが単調だぜ?
そんなんじゃ、そのうち顔面アザだらけだ』
『むぅ……』
僕がふて腐れるように頬を膨らませた瞬間――
右フックが炸裂した。
『ぶっ!?』
頬が歪み、
強引に息が漏れる。
僕は慌てて両腕でガードを固め、
再び回避へ集中した。
『オラオラァ!!
まだ始まったばかりだぞォ!!
本番はもっと苛烈なパンチが飛んでくる!!!』
ノリノリだった。
本能が、
殴り返せと叫んでいる。
だが僕は歯を食いしばる。
(違う……)
(今は喧嘩じゃない)
(練習なんだ……!)
『ハァ……ハァ……
思った以上に避けられなかった……』
『だろうな。
基本ができてねえからだ』
『じゃあ教えてくれよ……』
ハチローは鼻で笑う。
『素人はな。
まず経験積むのが一番なんだよ』
『経験ねえ……?』
ハチローは僕の目の前で、
ノリノリにシャドーボクシングを始めた。
滑るように動きながら、
そのまま解説を続ける。
『実戦あるのみだ』
シュッ、と拳が空を裂く。
『お前の持つ耐久力。
それはな、“壊される恐怖”を制御して、
初めて最大限に活きる』
『壊される恐怖?
僕が?』
『この世界じゃ珍しくねえ』
ハチローは淡々と言った。
『お前みたいに、
タフさを武器にしたルーキーが何人も壊れていった。
俺はそれを山ほど見てきた』
僕は半信半疑のまま笑う。
『……へえ?』
『疑ってるな?
別に構わねえよ』
次の瞬間――
ミットが飛んできた。
『うおっ!?』
僕は慌てて身を引く。
だが、
二発、三発とミットは止まらない。
僕は不器用に回避を続けながら、
なんとかその場を凌いだ。
そして――
『さて、次だ』
ハチローが構えを変える。
『今度は“攻め”のターン。
俺がディフェンスするから、
テキトーに殴ってみろ』
その言葉に、
僕は少しだけ笑った。
さっきの鬱憤を晴らせる。
そう思った。
シュッ。
まずはジャブ。
続けてワンツー。
今度はミットじゃない。
ハチロー本人の顔面めがけ、
拳を叩き込む。
――だが。
『荒削りだが、
少しずつサマになってきたな』
当たらない。
打っても。
打っても。
拳は空を切る。
まるで、
全部見えているみたいだった。
(……当たらない?)
僕は一度距離を取る。
そして再び踏み込もうとした瞬間――
ベチィッ!!
『がっ!?』
ミットの平らな部分が、
額へ叩き込まれた。
後ろへよろける。
だが、
そこへ追撃が飛んでくる。
『ベーシングジャブ!』
ズシッ。
ズシッ。
重い衝撃が、
上体へ次々突き刺さる。
僕は反射的にガードを固めた。
だが――
『ボディがガラ空きだ』
次の瞬間、
ハチローは右手のミットを外し、
鋭いジャブを腹へ突き刺した。
『うおっ!?』
槍みたいに重い。
息が詰まる。
体勢が崩れる。
そして、
下がったガードの隙間へ――
『パワースイープ』
左フック。
こめかみに直撃。
視界が揺れた。
次に気づいた時には、
僕は床へ転がっていた。




