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生命の木
「次の法王が誰になるかは、私も興味があるわ」
「どういう事だ?」
怪訝そうな声に、私は囁くようにして答えた。
「だって……もしかして今度のコンクラーベの結果によっては、この世界が変容してしまうのかもしれないのだから」
司祭枢機卿はノートパソコンの向こうで絶句している。
無理もない。
温室の魔女がこれまでそんな話を口にした事は、恐らくなかったはずだ。
「……お前、あの話を……知ってるのか……?」
やっと返って来た言葉には、恐怖の色が僅かに混じっている。
それをしばらく味わってから、私は切り出した。
「ええ、生命の木……でしょ?」
まるで共犯者か何かのように、小声でその名を告げる。
「法王庁庭園管理局が真に管理している、魔女とは別のもう一つの秘匿事項の話よね?」




