二人の復讐者
私は主であるモルガナを、憎んでいる。
言葉では言い尽くせないほどに、憎んでいる。
彼女を失ってから80年間、闇の中で私は彼女を待ち続けた。
それはもう一度会うため。
会って、復讐をするため----。
そしてメリッサが現れた。
「アイリスは、私の事が嫌い?」
「どうして?」
メリッサは、そのモルガナの生体サンプル----文字通りの血と肉から造られた、クローンだ。
そんな彼女を嫌いでない訳がない。
私の世界の中で、一番嫌いだ。
「だって……私を見る目がたまに、たまにだけど、なんだかとても冷たい時がある気がして……」
勘がいいのね、という言葉を飲み込み、精一杯の笑みを、私は少女に向ける。
「……嫌いなんかじゃないわよ」
嫌いという言葉では言い表せられないほどに。
憎んでいるから。
嫌いではない。
だから、これは嘘ではない。
「アイリスは怖くないの? 私が、モルガナの……あの【case-M】を引き起こした魔女のクローンでも?」
「ええ」
モルガナのクローンだからこそ、私はこの子を守らなければならない。
今日気付いた事がある。
アンソニーは、最終的にはモルガナを灰にするつもりだ。
そしてその方法を探るために、今の地位にまで上り詰めている。
彼を駆り立てているのは、神への信仰ではない。
部下と同僚と、恐らくは友人をも奪った魔女への、強烈な復讐心だ。
狂信者という皮を被った、復讐者なのだ。
だが、アンソニーにモルガナは殺させない。
だって、殺すのは、私なのだから。
私は、魔女モルガナに愛する弟と、そして私自身を殺されたのだ。
だから、私がこの手で殺すために----メリッサ、貴女を守るしかない。
復讐の機会を窺いながらその方法を探さなくてはならない。
「メリッサ……貴方の事は私が守る……だから、大丈夫よ」
黒髪の少女は、心から安堵した表情になって、笑った。
私は漸く思い出す。
この子は、メリッサは----私の幼い頃に、生き写しなのだ。




