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【case-M】

(大丈夫だ……ほら、私は、まだちゃんと……私の世界を、見ている)


 私は自分に言い聞かせた。


 もう『花弁』は見えない。

 部屋には私しかいない。


 私以外誰も存在してはいない----。

 

 それでも、モルガナの力の残滓がこの空気中に漂っているのではないかという思いは打ち消せないまま、私は呼吸を落ち着かせる。


(これが、魔女モルガナ……)


 封じられてもなお、その力は作物の間に根を張る雑草のように、人間の心を密やかに蝕む。


 彼女の『世界』を見た者は皆、精神の死を迎える。

 その記録を見た者もまた、廃人と化す。

 一人だけこちらの『世界』に踏みとどまった者を除いて。


 ----その者の名は、アンソニー・コルティー。


 司祭枢機卿にして、魔女を飼う者。

 検邪聖省内庭園管理局局長。


 事故調査委員会の、唯一の証言者。


 彼こそが、法王庁地下で発生した魔女による特殊災害【case-M】被害者のうち、ただ一人の回復者なのだ。


 そして、魔女モルガナを心から憎む者でもあった----。


 そう、この私と同じように----。

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