二人の復讐者
私は、モルガナを憎んでいる。
そしてメリッサは、そのモルガナの生体サンプル----文字通りの血と肉から造られた、クローンだ。
嫌いでない訳がない。
私の世界の中で、一番嫌いだ。
精一杯の笑みを、私は少女に向ける。
「……嫌いなんかじゃないわよ」
嫌いという言葉では言い表せられないほどに。
憎んでいるから。
だから、これは嘘ではない。
「怖くないの? 私がモルガナの……あの【case-M】を引き起こした魔女のクローンでも?」
「ええ」
モルガナのクローンだからこそ、私はこの子を守らなければならない。
今日気付いた事がある。
アンソニーは、最終的にはモルガナを灰にするつもりだ。
そしてその方法を探るために、今の地位にまで上り詰めている。
彼を駆り立てているのは、神への信仰ではない。
部下と同僚と、恐らくは友人をも奪った魔女への、復讐心だ。
狂信者という皮を被った、復讐者なのだ。
だが、アンソニーにモルガナは殺させない。
だって、殺すのは、私なのだから。
私は、魔女モルガナに愛する弟と、そして私自身を殺されたのだ。
だから、私がこの手で殺すために----貴女を守るしかない。
復讐の機会を窺いながらその方法を探さなくてはならない。
「メリッサ……貴方の事は私が守る……だから、大丈夫よ」
黒髪の少女は、心から安堵した表情になって、笑った。
私は漸く思い出す。
この子は、メリッサは----私の幼い頃に、生き写しなのだ。




