48/398
fragment5
魔女の森には決して近付いてはならないよ----。
もちろん、僕もそう聞かされてきた。
ほんの幼い頃は、母から、
母が亡くなってからは、乳母や世話係の侍女から----。
いつしか僕にとって、森という存在は魔女そのものになっていた。
魔女と聞けば森を思い出し、森と聞けば魔女に恐怖した。
だけど、姉上だけは違った。
『森には危険がいっぱいだから、絶対に入っちゃ駄目よ』
杜に近づくなという教えは同じでも、魔女という言葉を姉上が口にした事はあまりない。
姉上は、魔女なんて信じていない。
今こうして魔女の森に横たわり、命の灯が消えつつある時ですら、
魔女も、魔術も、神秘の存在も----。
姉上はなに一つ信じていない。
愛用の剣だけをしっかりと握ったまま、森に横たわって、僕の姉上は----ゆっくりと死につつある。




