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「アイリス……アイリスってばぁ」


 ゆさゆさと腕を揺さぶられて、私は我に返った。


「荷物の片付け終わっちゃったよ?」

(あれ、私……アンソニーと話して……?)


 慌てて覗き込んだノートパソコンは、とっくに沈黙していた。

 

 さっきまで人の声が出ていたとは思えない他人行儀な冷たい手触りは、しかしどこか後ろめたい安堵を私にもたらす。

 やはり、命のない物の方が私には合っている----そんな事を思うほどに、私はひどい疲労感を覚えていた。


「もぅ……せっかくアイリスにも手伝ってもらおうと思ってたのに、全然戻って来ないんだもん」  

 

メリッサの拗ねた声が少し遠い。

「ごめんね、ちょっとぼんやりしてたみたい……」

 壁際の小さな机にノートパソコンを置き、私は髪をかき上げた。

「ね? アンソニーと、なんの話してたの?」

 すぐに機嫌が直る性質たちなのか、もう少女の興味は移っている。


 まるで猫だ、と私は思う。


 スカートに纏わり付く猫のように、私に身体を寄せてくる仕草は、何かを嗅ぎ取ろうとしているようにも見える。


(猫なら愛でられもするのに、か……)


 私は足元の少女を見る。

 本当に、小さい。


「……どうしたの」


 少女は不思議そうな顔で首を傾げた。

 絹糸のような光沢の黒髪が小さな肩から零れ落ちた。

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