神よ、我ら魔女に永遠のご加護のあらんことを
<降下三分前です。減圧開始、各乗員に鎮静剤注入します>
<各自耐衝撃体制を維持>
<目標地点に敵の動きなし、座標再調整せよ>
気が付けば、私は棺桶状のカプセルの中に立たされていた。
おなじみの黒いスーツを着て、ヘッドセットのようなものを頭に着けている。
<降下二分前、コードは全てブルー。異常なし>
メリッサもアネモネも他のカプセルに入っているのだろうとは思っても、心細いものは心細い。
<現地の風速8メートル。着地地点再計算中>
オペレーター達の淡々としたやり取りが、却ってこちらの心拍数を上げてくる。
(前はロシアだったけど……今度は一体何処に連れて来られてるの……?)
『調子はどうだ? イケそうか?』
『その質問の前に、ここは何処なのよ!?』
<投下開始!>
オペレーターの声と共に、私は未知の戦場に棺桶ごと放り出される。
この時点で、もう寒い。
骨の髄まで寒い。
あの極寒のロシアが心底懐かしくなるくらいに、寒い。
『ここは南極上空だ、とだけ教えておこう』
『な、南極……!?』
途端に思い出した。
1945年、ナチスは対ロシア戦で大打撃を受け、ロンギヌスの槍は米軍によって奪還された後ウィーンのハプスブルク家へ返却された。
しかし、実は奪還されたロンギヌスの槍はレプリカであり、本物はナチス親衛隊のトップであるヒムラーの手によって密かに持ち出され、南極地下の秘密基地に隠されている----という説だ。
(結局どれが本物なのか分かってなかったんじゃないのよ……!)
その時、鈍い振動が私の身体を貫いた。
着地したのだ。
『こういう時、何て言うか知ってるだろ?』
『知ってるけど、そんな事より寒すぎるわよ!』
私の抗議は無視して、法王が厳かな声で言う。
『神の御加護を(ゴッドスピード)だ……』
『だったら、せめて早く帰らせてよね……』
私は魔女ではない。
それでもこの世界を護ると決めた。
だから、泣き言はもう言わない。
カプセルが自動で開いた。
目の前には、白く輝く大地が途切れなく続いている。
「ここが南極? ペンギンいるかな?」
「連れて帰るのはダメだからね」
隣のカプセルから出て来たメリッサに急いで偏光サングラスを着けてやり、アネモネの装備をチェックする。
「では、ここからは私がご案内します」
飛んで来たカーラの向こうから、重装備のアンソニー達が歩いて来る。
「よろしくね、カーラ」
こうして、また人知れず私達魔女部隊ストライガの、戦いの日々が始まったのだった----。




