唯一にして絶対の
「もしかして今の話で安心したのか?」
せせら笑うような声に、私は慌ててノートパソコンを抱え直す。
「自分には何の能力もないから、イコール魔女ではないのだと、結論付けたつもりになってるのか?」
「そんなつもりじゃないわ」
どうだか、と呟き、男は続ける。
「確かに、ほとんどの魔女については、人間との相違は右半球の脳波の特異性で説明できる……あくまでも、『特異性を持っただけの人間』なのだと強弁もできよう」
微かに見えた気がした光が、また遠退く。
知りたくなかった真実が、目の前に突き出されようとしているのに、私はその瞬間から逃れられない。
「だが、脳波の特異性などというものは、実のところ我々にとっては重要ではない」
そうだ。
魔女の定義は、一つだけじゃないはずだ。
どうして忘れていたのだろう。
もっと、科学なんかで解明する必要もないほど歴然とした、
はっきりと刻まれた、
魔女の証があるではないか。
「法王庁の魔女の定義は、もう一つある」
自分の唾を飲み込む音が、やけにはっきりと聞こえた。
そうだ。
それこそが、私が魔女としてここに囚われている唯一で、絶対の理由だ。
「それは、死なない事だ」




