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問い
見えなくとも分かる。
波打つ金髪と、深い緑の瞳を持つ魔女が、そこに立っている。
魔女モルガナが、私の前に再び立っている----。
そう、私の、待ち続けていた魔女が----。
どくん、と心臓が跳ねた。
私の瞳にぼんやりとした影が映る。
その影は次第にはっきりとした輪郭を伴い、ランプの灯の中に浮かび上がって来る。
「えぇ……と……誰、この人……?」
そこに立っていたのは、見知らぬ少女だった。
黒髪で、黒い瞳。
「あなたは、誰?」
白いワンピースを着た少女が私の顔を覗き込む。
「もしかして……あなたが、魔女なの?」
薄明りのなかで艶を浮かべた髪が、さらさらさら、と音を立てた。
笑っている風でもなく、困っている風でもなく、ただ純粋に、問うているだけの表情で、少女は私を見ている。
まだ十歳にはなっていないだろう。
背丈は私の半分くらいだろうか。
華奢すぎる四肢は、この武骨な地下室には全くそぐわない。
淀んだ空気を吸うには平らすぎる胸も、真珠のように小さな歯も、何もかもが私の記憶の中の彼女からかけ離れている。