表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/381

fragment 3

 こんなはずじゃなかったんだ。

 

 僕は、ただ----魔女を一目見たくて、ただそれだけでこの森に入っただけなんだ。


 なのに、どうして姉上はこんなに血を流しているんだろう?

 どうしてどんどん冷たくなっていくんだろう?


 硬い土の上で僕は同じ問いを何度も繰り返している。

 まるで、そうしている間は時間を止める事ができているかのように。


 「……ね、魔女なんて……いなかったでしょ……?」


 姉上が、囁くように言う。

 僕を嗜める、いつもの優しく穏やかな、声だ。


 いや、違う。


 今の姉上の声は、ヒューヒューと空気が漏れるような音の間から、辛うじて聞こえている。


「分かったなら、もう……早く……父上が、心配……して……」


 返事ができないまま、僕は茫然としていた。

 僕でも分かる。


 姉上は、もう死ぬ----。


 闇は姉上の声を吸い、土は、姉上の血を吸い続ける。

 魔女の森が、姉上を雁字搦めにして貪っている。


 僕の大好きな姉上の、温もりを全て----吸い続ける。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ