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電算式魔術支援システム
「これは……?」
メリッサは首を傾げている私の横から無造作にトランクの中へと手を伸ばし、
「ええと……これと、これで……揃ってるのかな……?」
隙間なく詰め込まれた大小様々な装置を指でぽんぽんと叩きながら、何かを探しているようだ。
「あとはマニュアルが……あれ、どこだろ……?」
トランクの底を探っていた少女は、目的のものをようやく見付けたようだ。
「あったぁ……」
掴み出したのは、白い本。
まるで稀覯本でも扱うかのような手付きで表紙を払い、ページを捲っている。
「これは、何? これも全部貴女の荷物なの?」
このトランクの中身は、恐らくは電気で動く機械の類だ。
装置から伸びている黒い尻尾は、コードだろう。
しかし、この温室の中に電気は引かれていないはずなのだが----。
「私の、というか、アイリスと私の、になるのかな……?」
少女は白い本のページを物凄い勢いで捲りながら答えた。
「今日から私達のお仕事に使う、ええと……『電算式魔術支援システム』の、本体だって」