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リリアとりりあ

「やっと、着いたわ」



 りりあは、迷宮の扉から、走っていく。


 たどり着いた先は、

 とても懐かしい場所だった。


 リンヤと、凍結された時間を一緒に過ごした場所。


 トランプやゲーム機、棚や並べられたアクセサリー、そして、(リリア)がそこにいる。


「リリア、迎えにきたわ」

「えっ、あなたは?」

「りりあよ」

「そう。転生したのね。よかったわ」

「さぁ、リリア、ここからでましょう」

「ムリよ」

「えっ」

「わたしは、ここにいるわ」



 りりあは混乱する。


「な、なに言ってるの。リンヤが待ってるのよ。あなたが、ここの封印の迷宮から、だしたんじゃない。さぁ」

「わたしは、ここにいる。リンヤが望むこの世界で、これから生きていくの」



 りりあは、机の向かい側にいる、リリアに近づく。

 バックが重い。

 それを椅子に置いて、中身を確認する。


 妖精ノートをだして、机におく。



「リリア、もう、リンヤは、別の世界で生きているのよ。わたしの学園まできたわ。貴女の話しをきいたの。迎えにいってって」

「そう」

「貴女に、ほとんどのスキルを封印されてしまったから、運命も使えないのに、わたしを探しあてたの」

「うん」

「だから、もう、ここにいなくて、いいのよ」



 リリアは、うつむく。

 首をふると、周囲をみて話す。


「たしかに、リンヤは、いないわ。でも、リンヤが希望を抱いたのは、この部屋だった。わたしたちの想い出」

「うん」

「それに、わたしには帰る場所はないわ。わたしは、りりあの分身だもの。ここをでたら、きっと消えてしまう」

「そんなことない。だから、わたしが来たのよ」

「もう、帰って。妖精ノートを渡してくれれば、スキルを進化させておくわ」

「リリア」

「もう……」



 リリアは、机に置いてある、妖精ノートをつかむと、ページをひらいて、中身を確認していく。


「ねぇ、リリア、覚えてる?」


 リリアは、返事をしない。


「ルーレ師匠が言ってたこと」


 返事をしない


「それに、この部屋でリンヤが言ってくれたこと」


 返事がない


「迷宮での(うた)


 返事は……



「りりあ」

「なに?」

「貴女まさか」

「そうよ、最初から」

「最初から、リンヤをここから逃がす気で」

「そう、貴女を分割したの」

「運命は」

「あのときに既に始まっていたの」

「そう。そうね」



 ひと呼吸のあと、りりあは話す。

 もう、リリアに通じただろう。


「魔法は "約束"」


「転生魔法は」


「わがまま」


「ルーレ師匠は」


「乗り越えられるって」


「リンヤは」


「あのとき」


「約束してくれた」


「そして」


「貴女はわたしで」


「わたしは貴女」


「だって、わたしたちは」


「転生魔法使い」



 りりあは、リリアに転生魔法を使った。

 リリアの持っている妖精ノートが、光だす。



 りりあは、バックに入れてあった

 迷宮で受け取ったアイテムたちを机に拡げた。

 バックには、絵が小さくなったアクセサリーチャームが、つけてある。


「たくさん受け取ったわ」

「みんな使うの?」

「持ってきたのは、ほほすべてね」


 高魔力結晶に、宝石などを

 進化のための魔力の材料にしていく。


「進化できたわよ!」

「ねぇ、レイラ! 観てるよね」

「なぁに?」

「ここの部屋のできる限りのものをレイラの倉庫にお願い」


「わかったわ。あなたの頼みなら、倉庫ひとつあげるわ」


「ありがとう」

「それじゃ、いこっか、リリア」

「進化、ムダにしないでよ」

「まかせてよ」



 りりあは、レイラ倉庫に転送されていくこの部屋のすべてのものをみつめながら、妖精ノートに新しく描き込まれた、進化したばかりの魔法を使う。


(しん) 再会の(あお)


 部屋の空間が歪んでいき、景色がかわる。

 気づくと、雨が降っている。

 空間に青い花が咲いていく。


 その花たちに囲まれて、

 少しずつ、リリアの身体が消えていく。


「さようなら、リリア」

「ええ、ありがとう」


 リリアは、涙を流して消える。




 利凛雨(りりあ)は、封印魔法使いとなる。

 そして、この瞬間に迷宮第十四層は崩れていく。


 手には、バックと妖精ノート。


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