↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
58/77

六月中旬雨模様

 幸(さち)さんから、電話がきたのは、日曜だった。

 三ヶ月ぶりのさちさんの声は、とても明るかった。



「りりあさん、だよね」

「そう。え、さちさん」

「あ、りあ覚えてる、よかったぁ」

「それは、そうよ。でも電話おそかったじゃん」

「うん。退院してから、生活なれるまで、少し時間かかったからね」


 そして、退院してからはじめて会う日を決めた。

 くみさんには、わたしから連絡した。


「そう。病院のさちさんだよ」

「え。連絡きたんだ、よかった」

「今度遊ぼうよって」

「うん。いいよ」


 六月の週末、土曜日と日曜のどちらか、ということで、また、さちさんに連絡をとり、

 十八日の日曜日に決まった。


「まだ十三日だから、少しあるね。

 雨じゃないといいんだけどなぁ」



 学校で、朝くみさんに会うと、さちさんの話しになった。


「あ、おはよー、ななち」

「うん。なに、待ちあわせ?」

「うん。病院での子なの」

「そっかぁ。あ」

「どうしたの、ななち」

「いや。うん、なんでも。朝始まるよ」

「そうだね。あとでね、りーあ」

「うん」

「はーい」


 ななちが手をふると、ふり返して、隣のクラスに戻る。


「あのさ」

「うん。なに?」

「さちさんは、うん。いいや」

「いいの?」

「授業はじまる」


 ななちは、様子が変だ。



 授業がおわり、部活時間になると雲ゆきは怪しい。

 途中から、雨がふりだした。


「あら、陸上大変。雨けっこう降ってきた」


 りりあや、体育館で活動していた部活は、ぬれなかったけれど、外活動のテニスや陸上などは、慌てて室内に入ってきた。


「ななちや、くみさん濡れたかな」

「うん。陸上部は、室内練習かな」


 えみさんやみゆさんと、体育館の入口から、外の様子を確認して、また舞台に戻る。


「この時期、天気急変しやすいよね。雨も多くなってきたし」

「あぁ。買いもの大変だ」

「そっかぁ、りーあは、部活終わったあとで、買いものだもんね」

「うん」


 基礎トレーニングを終えて、舞台にメンバーが集まる。

 藍達あん先輩、通称あーちゃ先輩が、声をかける。


「五月中に、もちよった脚本で決まりました。みなさん協力ありがとうございます」



 えみさんがタイトルを読む。


「タイトル、宝石まいのもう一度キスをする」


 メンバーみんなで、拍手がおこる。


「一年生の三人は、新入生劇もあるから、大変かとは思いますが、ぜひオーディションは、受けてほしいです」

「はい」

「いまから、脚本配ります」


 三年生と、えみさんが、印刷してきてあった、束ねてある脚本を配る。

 それぞれ、メンバーにいきわたると


「まずは、みなさんで、読む時間をつくります。読みながら、自身がどの役をやりたいか、また裏方志望なのか、その理由を考えながら、進めてください」

「はい」



 一年生は、音響のデッキがあるそば、

 二年生は、少し左に円になるように、

 三年生は、バラバラとなり、脚本を読み進めていく。


 みゆさんと、わたしは近くになり、少しずつ読み進めながらみゆさんが、少し小さめに話しかけてくる。


「ここおもしろいね」

「うん」

「照明だと、こうかな?」

「あぁ」

「りーあは、どの辺」

「この役とか」

「ふーん」



 三十分かけて、読みこみ。

 三年生は、速読なのだろうか。

 読みおわったあと、

 運動をしたり、二人になって相談したりしている。


 えみさんとめぐやんに、ゆーみは、三人で役の相談をしているようだ。

 黒さんは、こういうとき、黙っているが、

 役に対しては、真剣だ。


「悪魔」

「うん」


 りりあが、ひとり言のように言うと、みゆさんが返してくれる。



 妖精時代には、悪魔と出逢うことは、何度もあった。

 悪魔と天使は、美形がおおく、男性も女性も妖精からしてみても、惚れぼれとしてしまう。

 妖精郵便の契約はしていないものの、ときどき郵便の手配をしたり、ヒトの世界に住む悪魔に、届けものをしたりもあった。


 そういえば、あの転落した廃ビルのような建物にも、悪魔の番号があったような。


「りーあは、さ」

「え、なに?」


 みゆさんに呼ばれていた。


「悪魔や天使いるって、考えてる?」

「うん」


 わたしは、すぐに返事をする。


「ほんとぉ。よかった」

「えと、悪魔って美形らしくて、羽根に模様があったり、するらしいよ」

「そうなんだぁ」


「あ、一年生のみなさん、ちょっといい? 集まって」


 部長が声をかける。

 たぶん、役のオーディションや披露会の話しなのだろう。


「ちょっと、照明室いかない」

「うん。いいよ」


 みゆさんの後をついていくと


「みゆーー、照明使うの?」


 えみさんが聞いてくる。


「うん」

「じゃ、下の幕閉じるね」

「はーい」



 階段で、上がって照明室にいく。

 なかには誰もいないはずだが、みゆさんはノックする。


 コンコンコン


「入りまーす」

「はーい」


 わたしが返事をした。


「ふふっ」

「上暑いね。窓開けるよ」

「うん」


 わたしが窓を開けていると、みゆさんは、照明盤のブレーカをあげて、照明盤のスイッチをつける。


「脚本のイメージだと」


 みゆさんが、ひとり言のように話すのは、脚本から、照明のイメージをつかもうとしているのだろう。


「あ、わたしも」

「うん」

「悪魔のイメージだと、暗いけど」

「外の風景もたくさんあるよね」

「それに、やっぱり見づらいしなぁ」

「色は、青かなぁ」

「でも、この主人公の娘は、明るいよね」


 舞台にいる、他のメンバーの周囲の色を、何種類も変化させながら、色のイメージや

 明かりの位置をつけたり消してみたりしている。


 一年生たちが、ときどき上の照明室をみるのは、たぶん照明つくりが珍しいからだろう。


「この色だと」

「うーん」

「位置はまだ先だよね」

「いまは、前の舞台の設定だからね」



 このあと、部長が声をかけて、解散のあいさつになるまで、ずっとみゆさんと、照明のアイデアを話していた。



 帰り道。

 くみさんと、ななちと帰っていた。


「今日、脚本の読みがはじまったよ」

「そうなんだぁ」

「テニスは」

「もう少しで、夏大かなぁ」

「陸上もだよね」

「そう。たぶんテニスと同じ日程」

「そっか」


 少しずつ忙しくなるらしい。


 ななちと分かれると、くみさんと寮に近い公園にきた。

 ベンチに座りながら。


「はい。くみさん新魔導書」

「これかぁ。ありがとう」

「今日は、魔力集中してみる」

「えと、どうやるんだっけ?」

「こう魔力の入るものに、ふれながら、エネルギーを流していくの」


 試しに、新魔導書に手を置いて、りりあは魔力を流していく。


「あっ」


 新魔導書は、薄く光りだし、ページが開くと魔力吸収や魔力放出の項目だった。


「そっかぁ。魔力の練習にも使えるんだね」

「うん。妖精ノートも魔力あるから、使えるけど、妖精ノートはもう書き込みは終わってるから、読むだけになるよね」

「わたしは、まだ記憶つながらないから、少し読んでるよ」

「そっかぁ」




 くみさんとわかれて、寮につき

 少しひと眠りしてあと、買いものにでる。


「ふぅ」


 帰り、食事にして、クラフトを少し進めてから、寝ることにした。


 でも寝る前に、脚本を読みながら。


「この役だよね」



 りりあは、預言者レポートをみたことで、

 自身がつくだろう、役のことを考えていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。