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迷宮第八層ティカット

 リリアは、扉の前で目覚める。

 座っていたけど、そのままの姿勢で寝ていたようだ。


 前の試練で、魔力回復はしたはず。

 でも、少し身体が重い。


 どちらかというと、連続で迷宮に挑んでいるから、体力疲労だろうか。

 ここは何層だったのか、もう何日経ってしまったかも、わからない。



「うーん。だるいなぁ」


 扉を観ると、翼のある者と、それに鳥の絵がたくさん。

 緑羽鳥だろうか。

 真ん中に、たぶん名前らしきものが、描かれている。


「ふぅ。休みたい。いや、寝てたか。そろそろいかないと」


 リリアは、なんとか立ちあがり、伸びをする。

 少しだけ、ストレッチもする。



 迷宮は、第十三まであるはず。


 もしかしたら、リンヤはそこまでたどり着いたのだろうか。


「よし。いってみるかぁ」



 扉の空間を歩きだすと、景色が変わる。


「え」


 広い空間だ。


 天井が高く、前にも横にも広い。

 横壁には、ズラリと窓が並んでいるが、外の風景はまぶしくてみえない。

 天井は、少し丸いだろうか。

 正面に、段が少し高いところがある。

 幕も結んであるが、あるようだ。


 ヒトの世界にある、体育館のような場所かも。


「あーーーー!」


 声を響かせると、反響してくる。


「リリア!」


 声が返ってくる。

 正面の段が上がっている場所の影から、その姿が現れる。


「天使だぁ!」


 みると、白っぽい羽に緑の模様があり、緑色の髪をした、キレイな天使がそこにいた。


 思わず、妖精のリリアでも見惚れてしまう。


 羽音がきて、ふりむくと、緑羽鳥に似てるが、灰色の鳥が天使の周りに集まっていく。

 舞台の上となる、その床には、たくさんの鳥が集まっていて


 クララ


 カラン


 ロンリン


 変わった鳴き声をだしている。


「あの」

「わたしは、ティカット。リリアだね」

「はい」

「封印魔法使いの天使、と言っても先にミラルの悪魔をみてるから、そんなに驚かないかな」

「いいえ。キレイ。素敵です」

「それは、ありがとう」


 リリアが舞台の側までいくと、灰色をした鳥たちのいくつかは、空中に逃げてしまう。

 よくみると、リリアが立っている床には、灰色の羽根がいくつも落ちていた。


「魔法で拡張してあるから、寝室も洗面もあるよ。まぁゆっくりしてね」

「いえ。迷宮の試練はなんですか?」



 天使が、不思議な歌声を響かせると、鳥たちが、一斉に空中に舞い、そして、天井ふきんの捕まれそうなところに、どんどん止まっていく。


「うわーー! すごい」

「キレイでしょ。妖精は緑だけど、天使の鳥たちは灰色なんだよ」 

「はい」

「まぁ、一度座ってよ」


 リリアは、段の上にのっかり、足をブラつかせる。

 鳥たちの小さな鳴き声と、外の明かりが不思議と少し眠くなる。


「鐘のような響きの鳴き声だから、灰鐘(はいかね) 鳥っていうよ」

「そうなんだぁ」


 クララ


 カラン


「ここの試練では、この鳥たちが持っているアイテムを集めてもらおうかな」

「アイテムですか?」

「うん」


 ティカットは優しくほほえむ。

 そして、隣に座ると、また歌う。


 まるで、リンヤが隣にいるみたいだ。

 懐かしい。


「少し眠いです」

「いいよ。眠っても」

「はい。いえ。はじめます」



 ティカットが、歌うのをやめて、緑の模様の羽をパタつかせると、鳥たちは、空中に少しずつ飛び出していき、いまはその群れができている。



「アイテム」


 どれが、そのアイテムを持っているのか、少しもわからない。

 何羽かは、リリアの近くを通り過ぎていく。


 なかが蒸しているのか、少しずつ、汗ばむリリア。


 一羽一羽捕まえるんじゃ、だめ。


 でも、どうしたらいい。

 リンヤだったら詩うのだろう。



 よく考えてみる。


 花を探す魔法に、水を集める魔法。

 それに、願いを加工すること。


「なんとか、なるのかもっ」


 ティカットにきく。


「ねぇ。アイテムはいくつあるの」

「三つのアイテムをそれぞれ一羽ずつ持っているよ」


 リリアは、持っていたバッグから、妖精ノートを取り出す。

 そして、新しく魔法をつくりだす。


 ノートにそれが、描きだされていく。


「空気中にある水を集めて」


 たくさんの鳥たちが行き交うなか、真ん中の空間に少しずつ水が集まっていく。


「水のかたまりに、探しものと願いをかける」


 空間に浮かんでいる水のかたまりの色が変化している。


「いけ。弾け」


 おおきなかたまりであった水が、その場で破裂して、小さな水のつぶが、それぞれ飛んでいる灰鐘鳥に向かっていく。


 ピシ

 パシ


 鳥たちに水が当たると、当たった部分の鳥たちの色が変化する。


 そして、その場で、次つぎと勢いをなくして倒れて、床に落ちてくる。


「これは」


 ティカットは驚く。

 百以上はいただろう灰鐘鳥は、すべて床に寝ている。


「この三羽ね」


 リリアは、アイテムをくわえている三羽の鳥をそっと集めて、ティカットの前にだす。


「うん。そうだね、すごい」

「大丈夫。倒れているだけ」


 それぞれが、別の色をした宝石をくわえていた。


「ルビー、トパーズ、サファイア」

「ええ。いずれも魔力結晶になっているわ」

「そうだね。この三つは貴重なもので、それを灰鐘鳥たちが、集めてきたんだね」

「ティカットは、宝石がほしかったの?」

「ううん。この三つをみつけてきた、立派な鳥を見分けたかったんだよね」

「そう。よかった。

「二つは使うから、はい。これはあげる」


 手には赤色をしたルビーと、灰色の羽根を持っている。

 リリアはそれを受け取る。


「うん。わかった」

「ひとつ聴いていい?」

「うん」

「天使や悪魔のわたしたちの仕事は、異界送り。エネルギー体となった者たちを異界の扉まで連れていくの」

「うん」

「でも、迷宮のように、何かに縛られてしまったら、そのまま残されてしまうの。怖くない?」

「うん。不思議とリンヤの詩を想い出すと、怖くない」

「リンヤ逢えるといいね」

「はい」



 そして、空中に浮かぶ陣に、リリアは吸い込まれていく。


 ティカットは、ひとつ歌う。

 鳥たちが、カランと歌いだす。



 リリアに、その歌は聴こえただろうか。



「心模様って歌。リンヤの心は、リリアとともにあるよ」


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