りりあ二年生、部活動開始
妖精333年生きたりーあは、覚えた転生魔法により九ノ葉学園の女子高生に転生した。
二年生となったりーあは、四月のこの日、新入生歓迎会という建前の、部活動勧誘会場となる体育館にきていた。
学園は部活が盛んであるが、しかし前の三年生のいなくなったこの時期、新三年生と新二年生にとっては、活動の幅と予算をとるべく、一年生の勧誘を活発化させる。
特にこの日の、歓迎会は格好の部活アピールと新規メンバー獲得の場となる。
りりあたち、演劇部もチラシをつくり、台本を準備し、簡単なセットまで用意して、この歓迎会に挑むことにした。
体育館は、もう学園の生徒でたくさんだ。
この新入生歓迎会は、生徒代表が中心となって、歓迎会チームを結成して運営するため、先生たちは基本ほとんど口だしをすることはない、らしい。
りりあは、昨年七月に転入したため、この四月の行事は、はじめて経験する。
「ねえ、めぐやん、ドキドキするね」
「そう? わたしは、演劇でしっかりセリフついたから、ワクワクかな」
「ゆーみは?」
「わたしは、衣装がんばったから、着られるのが嬉しい」
昨年までは三年生がいたため、台本読み段階で、役が決まってしまい、ほかは裏方だったが、今回のは、人数が不足しているため、みゆさんを除いては、みんな役がついている。
みゆさんは、照明にかかりきりで、調整役だ。
十七人いた演劇部は、三年生が引退したことで十三人になっていた。
新二年生八人と新三年生五人だ。
くみさんと、ななちが部活の衣装を着て近づいてきた。
ななちは、陸上ウェアで、くみさんはテニスウェアだ。
「りーあ、似合うね」
「くみさんこそ、テニスウェア合ってるよ。可愛い」
「そう。ありがとう」
「でも、スカート短くない? ねえ、ななち」
「え、あ、うん」
「えー、大丈夫だよ。短パンはいてるし」
くみさんがちらりとウェアのスカートをもち上げてみる。
ななちは、顔が赤い。
「いいなぁ、テニスウェア可愛い」
「演劇もいいじゃん。似合うよ、メイド服」
りーあは、前の三年生が文化祭のとき作って、あまったメイド服が部室にあって、それを着ることになった。
スカートは長めで、頭にはカチューシャ、袖や襟にフリルがある。
なぜか、モデルガンやモデルナイフを装備している。
「コンセプトが、戦うメイドらしいよ」
すると、くみさんを観て通りすぎる男子の三人がいる。
「こら、そこの。男子。エロで見ないの!」
「はーい」
すぐに、男子たちは、体育館の別の場所に移動するが、テニスウェアは目立つのか、ほかの男子もちらちらと観ている気がする。
「くみさんて、モテるんだ」
「こういうのは、モテじゃなくて、ただの妄想。それに、みてるのは、りーあのメイドかもじゃん。ね、ななち」
「えー、そこで聴くの?」
「え、なに。ななちもそういう妄想か。イヤだなぁ。はーもう。エロ」
「いや、待って。まだ何も。いや、可愛いよ」
「ふふん、ありがとうー!」
「あ、待って」
「なに」
「くみさん、めがねかけたまま」
「あ、忘れてた。ちょっと持ってて」
二人がじゃれあっている。
ななちもよくみると、筋肉はそれなりにしまっているし、ウェアも似合っているし、運動はできる。
そうか。
ななちも意外と、格好つければ、格好いいのかも。
でも、慣れてくると、なんか軽いっていうか、気弱っていうか。
そんなことを考えていると、舞台上での挨拶がおわり、歓迎会と部活紹介がはじまった。
運動部が先に、演技を披露していき、文化部は、あとのほうだ。
陸上部の発表で、ななちがハードル飛びを披露して、テニス部のくみさんが、舞台上で、ボールを打ち合い、文化部の演劇部の出番が近くなった。
今回の短い脚本は、メイド服と、体操着と浴衣を着て、装備品をつけた戦士たちが、簡単な殺陣を披露して、最後に一人だけが残るという、サバイバルアクションだった。
それぞれに武器を持っているため、セリフは少ないが、りりあはナイフで応戦して、モデルガンを打つ前には、やられて倒れてしまう。
残った新二年生の副部長の、えみさんが「危機を脱しても、なにも希望が残らなかった、ああ、わたしは何てことを」とセリフを言ったところで、劇は終わりになった。
えみさんが、泣いているのは、もちろん演技だろう。
けっこう拍手が起こり、みんな立ちあがって
「ありがとうございました!」
と言って、舞台から降りていく。
みゆさんは、照明係なため、ほかの部の照明もおこなっているため、忙しそうだ。
くみさんが、近づいてきて、笑顔で手を振ってくれる。
舞台がよかったらしい。
タオルで、汗をふいたあと
「教室戻って着替える?」
「でも、このあと、吹奏楽がやって、すぐチラシ配りだよ」
「このまま、で配ろうか」
みんなで、軽く打ち合わせして、ほかの生徒たちと一緒に、吹奏楽の演奏をみる。
黒さんが、新三年生たちと話しているのは、チラシや看板の設置について、だろうと思う。
閉会の話しが生徒会からアナウンスがあると、さっそく場所の取り合いになる。
体育館とその外の廊下、それに校庭の門のところまで、帰り支度して帰る一年生たちに、必死に勧誘をしていくことになる。
演劇部は、体育館の出入り口ふきんで、チラシ配りをして、一年生たちに説明をしつつ、手をふって見送る。
五十部はあっただろうチラシは、短時間で三十五部は配れたが、あとの帰りの生徒はまばらだ。
残りは、学園掲示板や演劇部の部室前にでも置かせてもらうようにする。
副部長になった、えみさんに残りのチラシを渡して、あとは解散となる。
「お疲れさまー!」
「おつかれ」
「あとはどうする」
「体育館、片付けで今日は使えないから、部活はなしだね」
「はーい」
くみさんと、ななちも勧誘を終えたようで、こちらに近づいてくる。
「どうだった?」
「陸上、けっこう反応よかったよね」
「演劇、楽しかったよ」
「テニス部可愛いー」
「とりあえず、着替えてこよ」
「そうだね、帰り集まろう」
こうして、帰りにまた、三人で集まることになった。
わたしは、部室に戻り、メイド服から着替える。
「ふぅ」
「おつかれさまー!」
同じく着替えていた、えみさんと、めぐやんが声をかけてくる。
「チラシうまくいったね、けっこうもらってくれたね」
「うん。でも、見学きてくれるかな」
「うん。でも、反応はよかったよね。メイドも可愛いかったし」
「そうだね」
「とりあえず、あとは見学待ち」
帰り道、くみさんとななちと、寮までの道を歩く。
制服に着替えた、くみさんとななちは、変わらずに、じゃれあっていた。
「テニスウェアよかったよ」
「もう、またその話し。陸上部、でもかっこよかった」
「そう、照れるな」
「あ、メイドさんもよかったよ。なんか戦うメイドさんって、いいよね」
「そ、そうかな」
寮までの道を感想をいいあって、わかれた。
寮につくと、管理人にあいさつをして、わたしの部屋の前にいくと、また緑羽鳥がいた。
部屋の前には、剣二本に、刀があり、それに魔物のスカイクラゲが浮いている。
剣や刀は、ともかく、クラゲどうしよう。
とりあえず、部屋のなかに入れた。




