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演劇部、春休み

 りりあは、三年生達の卒業式はみられずに、一年の春休みに入っていた。

 十月の後半から、二月までずっと病院だったため、すっかり部活の様子も変わっているだろう。


 春休みの予定表通り、休みはじめの土曜日に練習がある。


 部室のある体育館の二階につくと、なかからにぎやかな声がする。

 黒さんと、えみさん、めぐやんの声だ。

 少しもめているのだろうか。


 コンコンコン。


「失礼しまーす」


 入ってすぐに、かめさんが話しかけてくる。


「あ、りーあきたよ」

「お久しぶり。部活来られるようになりました」

「りーあだ」

「久しぶり」

「病院以来だね」

「よかった、もう大丈夫なの?」


 みんな、話しかけてくるため、ひとつ一つに答えてみる。


「お久しぶりです。お見舞いありがとうございました。もう平気。部活復帰です」

「そっかぁ、よかった。元気になったね」

「はい」

「ねえ」

「はい」

「なんで、敬語なの?」


 えみさんが、さっそくきいてくる。


「あの、部分的に記憶がもどってるだけなので、みんなとどう接していたかな。わからないんです」

「そうなの」

「大丈夫なのに、普通にしてなよ」

「敬語だと、変な感じ」


 これは黒さんだ。


「わかりました。あ、わかったわ」

「変ー!」


 みんなして笑う。


「あれ、違った?」

「いいよ、少しずつ慣れてね」

「そうだ。あとで、きいてもらいたいことあった」

「え、わたしに?」

「そう、りーあに」

「え、うん、わかったわ」

「それじゃ、揃ってる人数で、まずは基礎練習だね」

「はーい」


 それぞれ、着替えてから、舞台に下りていく。

 発声に、筋トレ、基礎練習と続けていくうちに、なんとなくりーあも部活の雰囲気が、思い出してきた。



 でも、何かが足りない。



 せっかく晴れてるし、と外で校舎の外周を走ったのち、舞台上での稽古がはじまる。

 りーあは、まだ舞台のはじで見学をしていた。


 すると、


「りーあは、照明室いってね」

「わかったわ」

「みゆー」

「なにー?」

「りーあ、よろね」

「はーい」


 りーあは階段を上がって、照明室に入る。


「みゆさん、よろしくね」

「うん、わかった。でも、ほんとは、はじめにりーあに教わったことだよ」

「え、そうだった?」

「そうだよー」


 いまだ転生ショックが残るようで、

 思い出せるところと、覚えていないところがある。


 練習中、舞台上の部員に声かけをしながら、照明を操作していく、みゆさん。


 となりで、メモをとる。



 ある程度したところで、交代してもらい、

 りりあ自身でも、照明操作をおこなう。


 やがての休憩時間。


 えみさんとめぐやんが、一緒にお弁当食べる、と誘ってくれた。

 ゆーみも一緒に四人で食べる。



 午後練習は、また発声をしたのち、舞台上で、いくつか古い台本を並べて、それのセリフ読みを全体でした。

 最後に、また照明室で、みゆさんに詳しく教えてもらううち、帰り支度となる。



 そういえば、話しって何だろう。



「今日は解散ね」


 二年生の先輩が声をかけて、バラけていく。

 みゆさんが先に帰り、りりあも帰ることにする。

 途中体育館から、でるとき


「お疲れさまでした」


 声を、かけてから帰りとなる。

 今日は、自転車でなく歩きのため、門からでると、くみさんが来ていた。


「ちょうど終わるかと思って、観にきたよ」

「ありがとう。心配かけてるね」

「うん、大丈夫だよ」

「いこっか」


 くみさんが、となりを歩きながら、話す。


「部活どう?」

「うーん、まだあまり思い出せない」

「そっかぁ」

「わたし照明をやってたらしいけど、いまのところ、みゆさんのほうが詳しいかも」

「そうなんだ」

「くみさんは、部活うまくいってるの」

「わたしは、ときどきさぼりながら、うまくいってるかな」

「ふふ、そうなんだぁ」

「病院で、長かったから、少しずつなのかもね。なにかきっかけあればいいけど」


 春休みのこの時期、もう少しで桜が咲く。

 もう、そこまでには寒さはなく、散歩しながら、帰るのに、ちょうどいいくらいだ。


「少し、寄り道しない?」

「いいよ」


 くみさんがそう言ってくれたため、帰り道とは、少し違う道を歩く。


「この木、桜だよ。もう少しだね」

「そういえば、わたし、もうしばらく桜観てないよ」


 そういうと、くみさんは驚く。


「え、そうなの? 毎年、桜あるのに」



 そう。

 妖精の時には、郵便や師匠との修行に忙しく、ヒトの世界の様子は、ときどきしか見なかった。

 ときどき、この時期に、ヒトの世界に引っ越した妖精宛に、荷物を届けるときに、桜の木をみたのと、あとは、いつだったか。


 妖精三百年、あまりのんびりしなかったのかも。


 ふいに、リンヤのことを思い出し、つぎに誰かのことを想い出した。


 そうだ。


「くみさん、あの」

「あ、観て」

「え」


 緑の羽根をした、緑羽鳥が空中を舞っている。

 ひらりと降りてきて、外階段のあるビルで、とまる。

 外にバケツがだしてあり、水を飲んだり、水あびをしているようにみえる。


「かわいいー、なんて名前の鳥だろう」

「緑羽鳥だよ」

「え、そうなの」

「そう。エメラルドハッピーフェザー」

「えー名前長いね」

「賢い鳥さんなんだよ」

「そっかぁ」


 きっと、妖精クイーンの使いだろう。

 でも、ヒトの世界で目立って動くのは、少し珍しい。

 くみさんと、そのまま話しながら帰り、学園の寮についたところで、くみさんとは別れた。


 寮の管理人にあいさつして、部屋に入ろうとしたとき、

 先ほどの緑羽鳥が、部屋の扉の前まで、舞ってきた。


「どうしたの?」


 たずねると


「クイッグ ククルルーク」


 どうやら、何か届けてくれたようだ。

 緑の羽根とグローブ、ナックルだった。


「ありがとう」


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