表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/77

喚ばれる

 目を覚まして、りりあは、また病室の明かりと、天井を眺めていた。



 意識を回復してから、入院生活は一ヶ月半になっていた。

 その間に、どうやら、りりあの診断の名前をつけることが目的らしく、部分記憶喪失による記憶障害、失調症、失語症、免疫機能低下による免疫不全、睡眠障害など、とにかく可能性のありそうなものの検査と診断とテストと、カウンセリングを繰り返しおこなった。


 検査やカウンセリング、認知テストのようなものをだされて、解答するなどをしてきたりりあは、だんだんと入院生活にも慣れ、入院仲間もできた。


 ときおりくる部活のメンバーとも話し、また学園の先生がきたときには、留年しないように、学期末ぎりぎりまで待ってくれて、入院中にできる課題をだしてくれた。



 入院仲間の丸和 (さち)さんが、またわたしの病室にきて、一緒に学園でだされた課題を解いていた。

 さちさんは、一緒の年で、近くの別の学園に(かよ)っている。


「ねえ、りあ、この答え、て、何だろう」

「うーん、問三のはたぶん、きみに解いてほしい、のところから、続くよどこまでも、で一つの括りかな」

「でも、この文章だと、なにか歌のようでもある、のほうが正しい感じしない」

「どうだろう」


 こう話していると、くみさんがお見舞いにきた。


「おはよー、おじゃまー」

「おはよー」

「どう、課題もう少しかな」

「うん、さちさんにもだいぶ手伝ってもらってるよ」

「そうなんだぁ」


 くみさんと、今度は三人で、課題を解いていく。



 一時間ほどして、検査に呼ばれる。

 今日は、担当の田橋先生の曜日で、先生の待つ診察室に入った。


 何故か、田橋先生は、少し楽しそうだ。


「いい報せですよ」

「ホントですか?」

「そうですよ。退院の話しが進みました」

「そっかぁ、よかったです」

「薬もきいてるようですし、なにか悩みはありますか?」

「このところ、以前の夢をよくみます。それに、なんだか体力が落ちてる気もするし」

「体力は、仕方ないですね。運動もメニューにいれましょうか」

「作業時間は、書きものとか、課題とかやりたいです」

「わかりました。夢は、眠りが浅いのかもしれません」

「眠剤あまり使いたくないなぁ。先生」

「わかりました。もう少しみてから、また聞きますね」

「はい、ありがとうございます」



 診察室をでて病室に、向かう。

 さちさんとくみさんが、話している途中だった。


「えー! 好きなひといるの」

「そうだよ」

「ねえ、なんの話し?」

「りあの恋話し」

「え、わたしの?」

「そう。いや、たぶんだけどね」

「もう、いいから」

「えー、もう少し」

「それより、さちさんは、部活とかはどうしてるの?」

「わたしは部活は、テニスだよ。あまり参加できてないなぁ」

「入院多いもんね」

「そうー。今回も安定するまで、時間かかった。りあのほうが退院早いかもね」

「わたしも、もう一ヶ月半くらいだよ」

「入院の区切りあるから、退院の話しでるよ」

「えー、そうなんだ」

「詳しいね」

「もう何回かきてるからね」

「そっかぁー」


 また三人で、課題の続きを解いていく。

 くみさんが


「そろそろ、夕食かな」


 時計をみながら、言うと、食事の準備の音がしだした。


「わかった。じゃ、また今度だね」


 さちさんが座っていたベットから、立ちあがり、じゃね、と自身の病室に戻っていく。


 途中で、看護師さんになにか聞かれているようだ。


「くみさんは、どうする?」

「今日は、これ買ってきた」


 カバンから、飲みものとパンをとりだす。

 食事を置いていくスタッフがくると、サッと隠す、くみさん。


「そのうち怒られるかな」

「そしたら、わたしも一緒に怒られるからね」

「りーあ、ていいやつだなぁ」

「ふふ、ありがとう」

「今度トランプ持ってくるね」

「そうだね、なんだか懐かしいなぁ」

「え、なんで懐かしいの?」


 あ、と思う。


 たぶん懐かしいのは、妖精のリンヤを思い出したからだ。


「たしか、部活の合宿で、トランプしたからかなぁ」

「そっかぁ、演劇合宿も少し経ったからね」

「くみさんは、最近は部活いいの?」

「しばらくは休みだよ」

「そっか」


 食事をして、歯磨きをしに洗面場所までいく。


 戻るとき、また一つ想い出した。


 妖精リンヤの腕輪には、たしか効果を付与した記憶がある。

 それにトケルンにも。


 一つ想い出すと、今度はひどく眠くなる。

 食事あとに飲んだ薬の効果もあるだろう。

 しかし、この感じは魔力を使い過ぎたときに似ているような。



(りーあ、転生魔法はきっと意味があるよ)



 だれかに喚ばれた気がして、ふと後ろを向くも、そこには誰もいない。


 一緒に、歩いていたくみさんが聴いてくる。


「ねえ、りーあ。退院したら、何かしたいことある?」

「そうだね。とりあえずいちごは食べようかな」

「いちごかぁ。売ってるかな」

「それと、連絡とりたいな」

「え、だれ?」

「うん。今度話すよ」

「えー、いまじゃないの?」

「今度ね」


 病室に戻り、片付けをしてくみさんは帰っていく。


「ここの病室ももう少しか」


 ベットに座り、眠りがくる前に、妖精ノートの自動筆記をして、ベットに転がる。



「リンヤ、どうしてる? トランプ、覚えてるかな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ