部活メンバーお見舞い
三日かけて、くみさんと話しながら、少しずつ記憶が戻ってきた。
変わらず、よくわからない記憶もあるが、どうやらわたしは、演劇部に通い、照明を主に手伝っていたみたいだ。
同じ部活のとおやくんに、照明を教わりながら、大会にでて、その大会の帰り道までの話しを、くみさんに聴いたばかりだ。
今日には、部のメンバーもきてくれるらしい。
わたしは、昨日受け取った新魔導書を読みはじめる。
なかは妖精言葉になるが、なぜか妖精時代の記憶のほうが、想い出しやすいようだ。
わたし固有の預言者レポートに、運命のスキル、転移と転送のスキルに、それに転生魔法。
だいぶ魔法スキルの種類が把握できた。
まだ妖精クイーンやルーレ師匠の話しは、薄れているが、だんだんと戻ってくるだろう。
ひとの身体になってから、MSPの上限があり、それを上げるスキルまである。
「ねえ、りーあ」
「なに?」
「りーあって、好きなひといるの?」
「え、なんで急に」
「だって、部活に委員会に、なんかりーあ楽しそうだったから」
なにか、想い出しそうになるが、やはりわからない。
そのうちに、部員が二人きた。
笑未留、と未有だ。
「やっほ、戻ってきたね。」
「無事に起きられて、よかったね」
とえみさんと、みゆさんが話す。
「あ、七海 大地くんもあとでくるよ」
「そうなんだ」
「そうだね、ななちと、りーあさん仲良いよね。」
「そうだった?」
「そうー、花火いったり、カラオケいったりしてたみたい」
「えー、いいなぁ、わたしもいきたい」
みゆさんが、いいなぁ、と繰り返す。
「わたしたちもあとでいこうよ」
「よし、そうしよー!」
えみさんとみゆさんで話しが盛り上がる。
「ごめんなさい。二人ていつもそうだったっけ?」
「あ、りーあさん、うるさかったかな」
「ううん、なんか、女子高生だなぁ、て」
「なにー、りーあもカラオケにいきたいか?」
「残念だね。入院、もう少しかかるの?」
「そうみたい」
「そうだよ、まだ目覚めたばかりなんだから」
くみさんが、二人にいうが、気分はそんなに落ち込んでいない。
扉をあけて、七海 大地くんがくる。
「あれー、にぎやかだね」
「ななち。りーあさん、少しずつ戻ってるよ」
「そっかぁ、よかったぁ。しばらく目さまさないから、ほんとどうしよーて感じだったよ」
「ごめんなさい、心配かけて」
「いや、心配させてよ」
「そうだよ」
このあと、リハビリもかねて、ななちに洗面まで、つきあってもらった。
病室では、少し居づらそうだったからだ。
「ほんと、心配かけたね」
「りーあさん、ほんとよかったよ」
「そう。くみさんと話して、だいぶ、話しが繋がるようになってきたの」
「そうかぁ」
洗面のところにつき、顔を洗い、ハンカチでふきとる。
「あ、そういえば」
「なに」
「とおやくん、まだ見つからないんだ」
「うん」
「あのときの、こと、まだわからない?」
「うん、ごめん。ごめんなさい」
「いいよ。焦らないで。でも、こう行方不明なの、て、なんか、りーあさんのと関係してる気がするよ」
「わかった。考えてみるね」
「うん、よろしく」
病室に戻って、雑談をしているうち、夕食時間になり、食事がくる。
そろそろと、ななちが帰り、えみさんとみゆさんも、また来るね、と帰っていった。
くみさんは、食事までつきあい、くみさん自身は、いつの間にか買ってきていた、パンを食べていた。
夕食後に、歯磨きとお手洗いをすませて、病室に戻ると、くみさんが、ベットの端で、腕枕をして、少し寝ているようだ。
そーっと、ベットに座りカーテンを閉めて、そして、新魔導書を再び読みはじめる。
預言者レポートと、運命のスキル、この二つは、まだ最近更新されたばかりだ。
運命のスキルは、さらに続きがあり、稼働中だ。
妖精ノートをだして、そーっと開く。
間に挟んである、割れたものをとりだす。
それは、運命のコインと呼ばれるもので、妖精文字で、ライルノーム ニイル リンヤ シャイルー ラリリンタとなっている。
転生したときに、妖精ノートと一緒に、ここまで転送されたらしい。
リンヤは、いまもまだ、迷宮のなかだろうか。
妖精ノートを自動筆記して、とじると
くみさんが、目を覚まして
「ごめんね、少し寝てたみたい」
と小さくつぶやいた。




