転生魔法使いリリア、割れた運命
そうだ。
わたし、リンヤにききたいことがあった。
確かめないと。
コールドリミテッドタイム明けてから、かなりの時間が過ぎたとき、急に想いたち、リンヤを探すことにした。
運命の導く者を使えば、リンヤには会えるが、時が戻ってしまう。
ラルンカ ナリリミ リリア ルード リルルンロは、もう転生魔法使いとなっていた。
できれば、リンヤから預かった運命のコインを使うのは避けたいため、自力で探すことにした。
リンヤから受け取った運命のコインは、リンヤの無事を確かめる手段になり、そして、運命のスキルを分けることもできたようだ。
リリアも、少しだけ運命のスキルが身についた。
おおきめの妖精図書館にいき、魔導書から、妖精探しの魔法と、転移魔法をそれぞれ探しあて、スキルを身につける。
妖精探しの魔法では、大枠として、
探したい相手のアイテムや具体的なものがあったほうが、正確にわかるようだ。
リンヤに関して、いま、もっているのは、コインくらいだ。
コインが、割れていない以上、リンヤはいるはず。
コインをよくみると、騎士の持つ剣に、リンヤの名前が浮かんでみえる。
きっと魔法が継続しているしるしだ。
転移魔法は、師匠が得意だったが、わたしも郵便をしているから、物品を送る手順はわかっている。
問題は、わたし自身をリンヤのところまで、飛ばせるか、だ。
しかし、妖精探しの魔法でさまざまに、試してみたがリンヤの姿がみえない。
妖精界から、でていってしまったのかも。
すると、異界は遠く、魔法の効力は薄まってしまう。
転移魔法を試しにつかってみる。
三度ほど、ものや自分自身をとばしてみるが、転移したものは、応答のないまま行方不明になり、リリア自身は、転移エリアにとんでも、弾かれて、元の場所にきてしまう。
たぶん、転移魔法スキルのレベルが足りないのだろう。
転送につかっていた物品に関する転送魔法は、レベル最大だけど、わたし自身をとばすには、スキルの修行が必要になるのかも。
こうして、リリアは運命のコインを割ることにした。
視界が点滅し、光につつまれ、そして、わたしの妖精ノートを通じて、クイーンの描く文字が浮かぶ。
リリアさん、通常、運命のコインの効果により、リンヤさんのいる場所まで、時を移動します。
けれど、現在もこの運命のスキルは、進化稼働中なため、迷宮を発生させています。
この迷宮にいく場合、貴女は転生魔法使いの契約条件のため、割れて分裂するしか、方法はありません。
それでも、運命のスキルからの魔法を許可しますか?
リリアは、リンヤから預かった運命のスキルを発動した。
分裂してリリア (仮)を迷宮に残して、もうひとつのリリア (本体)を妖精界に置き去りにしたはずだった。
けれど、発動した瞬間、弾かれたのは、妖精界のリリアだった。
わたしの影が、迷宮への扉を開ける。
きっと、迷宮の入り口から先に、リンヤはいるはずだ。
弾かれたリリアには、転生魔法が発動し、そのまま、広場にある噴水まで飛ばされる。
そして、噴水の像の真ん中に収められているクリスタルに衝突した。
クリスタルは粉砕し、リリアはクリスタルの欠片に突き刺さる。
転生魔法が、その瞬間リリアを包みこみ
意識を失う前のリリアに、魔法の言葉が声をかけた。
周囲に存在する記憶をリセットします。
転生魔法の影響範囲、妖精リリア。
転移と時空間リセットにより
この期間の記憶は薄れる可能性あります。
転移先の空間において、転生先と移行スキルを選択できます。
初期転移開始。
妖精リリアを転移しました。
次にリリアが目を覚ましたのは、
ひかりかがやく空間だった。
深層魔法を使うときに似ているが、
周囲の風景は何もなく、ただ、床らしいものと横に縦に長く空間が拡がっている。
「ここは、なに」
床に落ちていた妖精ノートが、その文字を浮かびあがらせている。
そうだった。
妖精ノートは、クイーンが管理しているデータ層に繋がるものだ。
きっと、この空間でも妖精ノートは機能するはずだ。
妖精ノートには、初期転移成功。
転移先、リリア固有異空間。
文字が浮かんでいた。
転生先に持ち込むものと、魔法スキル、それに転生先の自身の名前をつける、と描いてある。
つけなければ、移行できないらしい。
「そっか。ここが転生魔法の空間なのね」
再び、妖精ノートが点滅したあと、同じ文字が繰り返し、表示される。
「でも、困ったな。転生魔法の空間ってことは、妖精のわたしは、もういないのか」
すると、立ちあがり、考えていたわたしの背後から、突然声がした。
「リリア」
「え、だれ?」
「ねえ、リリア」
「どこから声がするの」
光かがやく、空間のなか、かがやく影のようなものが近づいてきて、そして、だんだんと姿がはっきりしてきた。
「え、なんで」
「そんなに、びっくりしないでよ」
「だって、これって」
「そう、わたしはわたし。でも、わたしはあなたでもある」
「どういうこと。だって」
目の前にいるのは、妖精リリアだった。
少し息を整えて、また話しかける。
「そう、つまりは、これが転生魔法なのね!」
「そう、お利口さん」
「あなたは、あなた。でも、わたしでもある」
「リリア、転生魔法使いリリア。貴女はここで、何を願うの?」




