凍結された時間の終わり
コールドリミテッドタイムは、リンヤと契約した、共同契約魔法だ。
リリアの妖精歴百一年めから始まり、そして、いつ終わるのかもわからない、時間を凍結させる魔法。
そのいつ終わるのか、がわかった。
夜、二十五時よりだいぶ前、リンヤが早めに帰り、詩流しにより、手渡されたアイテムを受け取り、カウンターテーブルに、リンヤと拡げていた。
リンヤは温かい紅茶を飲み、わたしはホットコーヒーを飲み、話していた。
朝は、リンヤに協力してもらい、預言者レポートで、リンヤの今日の詩の披露の様子を伝えたため、リンヤは、はりきり、夕方でていった。
披露した、詩の続きの話しを夜にいま聴いていた。
カウンターで、手がふれたとき、急に意識がとび、預言者レポートの未来のできごとが浮かんだ。
日付が変わらない明日の朝。
いつもと変わらない、リリアの準備作業。
朝のパンを終えて、紅茶を飲んでいるとき、緑の羽をもつ幸せ緑羽鳥が、窓の外にいることに気づいた。
ふと、クイーンからのメッセージではないかな、と想いながら、トケルンをみるが、メッセージ着信はない。
窓を開けてみると、緑羽鳥がかけているポシェットに、手紙が入っていた。
手紙を受け取ると、
「クックルル、トト」
と返事をして、飛んでいってしまう。
手紙は、クイーンからのものだが、かなり長そうだ。
仕方ない。
読んでみると、コールドタイムの終結の文字と、持っている種の交換方法が描かれている。
リンヤを起こして、事情を説明すると、外にでてみよう、と話しになり、リンヤと共に玄関から外にでる。
ハッとして、リンヤの顔をみる。
リンヤは、話しをとめて、
「どうしたの、リリア」
と聴いてくる。
「リンヤ、びっくりすることがある」
「もしかして、未来が観えたの? どんなのだった?」
「あ、明日……」
「明日?」
「そう、明日がくるよ。未来が、凍結された未来が解除されるよ」
「それっ、て、この魔法が解除されるのかい?」
「そう。預言者レポートが観えたの。朝に緑羽鳥がきて、手紙を持ってるの」
「そう」
「それで、クイーンから、解除するって」
「そう」
「ねえ、あれから、何年経ったの?」
「凍結された時から、何年だろう」
リンヤは、少し考えこんだあと、
「リリア、そしたら、この二十五時までが、一緒に過ごす最後の夜なんだね」
「そうだよー。え、どうしよ」
「いつも通りだよ」
「えー、変わらないの? 最後には、こう、何かあるんだよ」
リンヤは、再び考えたあとで
「じゃ、最後に、なにか願いをひとつずつ言っていこう」
「願い?」
「願いを言って、そして、そのために、魔法を使って試してみるんだ」
「そっか、よし、わかったよ」
リンヤが話す。
「そうだなぁ、なにしようかな」
「えーなにしたら、いいんだろう」
「そうだ、詩のスキルを使って、二人でできることをしよう」
「そっか、二人で何かつくるとか、するとかかな。じゃ、好きなアイテムを集めてみるよ」
部屋のなか、アイテムをたくさん集めてみた。
すると、集めたアイテムは
リンヤと遊んだトランプや縄跳び、ビー玉、当時の最新だったゲーム機、帽子のコレクションに、バック、リリアが売り出し用に創ってあまったアクセサリやチャームなど、あっという間に、部屋がものであふれていく。
リンヤは、これまでに創った詩のノートや、壊れてしまったアイテムのうち、すてられなかった小物などを集めた。
「けっこうこの期間で、いろいろ遊んだり集めたりしたね」
「ゲーム機懐かしいね」
「トランプは、最近でもやった気がする」
「そうだ」
「そうだね」
「リリアのは?」
「わたしの願いは、コールド期間を終えても、この期間の記憶を失わないように、記憶バンクと、それをまもるカギをつくりたいなぁ」
「リンヤは?」
「このコールドリミテッドタイムの魔法を、ひとりでも使える魔法に書き換えたいな。詩とあわせればできるかな」
「リンヤなら、できるのかも」
少し考えたあと、リリアは、新魔導書でみたスキルのなかから、使えそうなものを思い出して、リンヤの詩とあわせてみた。
こうして、共同でつくったアイテムのうち、効果のありそうなもの二つをお互いに持つことにした。
転送契約腕輪を改装したもので、身につけることで、記憶バンクにアクセスして、鍵となる合言葉を使うことで、失ってしまった記憶や記録も復元できるものだ。
もう一つは、トケルン型時計を改装したもので、コールドリミテッドタイムの契約魔法の一部を変更したり、契約の内容を増やしたりというのをひとりでも、可能とする設計にした。
リンヤの詩声の力で、アイテムに効果を付加していく。
「リンヤの詩、すごい便利」
「そうかな」
「そうだよ。効果付与や魔法打ち消し、ステータスアップに、それでリンヤ召喚も使えるでしょ」
「詩を魔力で追加する前は、召喚で生活してたから」
「トラニャスの他にも、たくさんいるんだよね」
「伝説級の、特別なものも含めれば、おおいのかな」
「伝説級、すごそう!」
「ふふ、でも、みんな大好きだから、基本は、とてもやさしい妖精ばかりだよ。なかには、悪魔級や器だけの素材級もいるし」
「みんな、観て会いたいな」
「きっと、リリアも会えるよ」
トケルンの時刻は、変わらない。
けれど、もう感覚が慣れているため、リリアは、もう少し過ごしているとリミテッド二十五時、リセットが始まることがわかっていた。
「一応、寝てみようか。おやすみ、リンヤ」
「おやすみ」
リリアとリンヤが、眠りについて少し経ち、リセットがおこなわれる。
それは、一瞬のできことで、時計が一瞬動いたかと思うと、もう次のときには、朝になり、外は明るくなる。
今日も日付は動くことなく、進んでいく。
緑羽鳥が、その手紙を妖精リリアに渡して、魔法契約が解除されるその瞬間まで。




