リンヤ、召喚と戦闘
リンヤの朝はおそい。
リリアの朝、でかける音にも気づかなく、よく寝ている。
お昼より前には、目は覚めているものの、すぐには動けずに、お昼より少し前になって、目を覚ますと、起きたあとの手順通りに、暖かい紅茶を飲み、手元の端末で、情報を検索し、朝とお昼のあわさった軽食をする。
そのあと妖精ノートをひらいて、自動筆記をする。
またベットに転がると、寝てしまうため、そのあとはバタバタと、掃除や洗濯、詩の練習をして、夕方ほどまで、このビルの部屋で過ごしていく。
夕方になるくらいに、でかける準備をしていると、夜ほどになるころ、リリアが帰ってくる。
「おかえりなさい、リリアさん」
「帰ってきたよ」
「じゃ、交代だね」
「いってらっしゃい」
こうしてリリアとは、交代で、夕方以降に外出をする。
晩ごはんは、食べるときとないときがあり、おそくに帰ると、リリアが料理をして、待っていてくれるときもある。
共同生活をして、リンヤが驚いたのは、リリアの魔法の種類やアイテム合成の特技だ。
いい師匠がいるらしく、日付が進まないコールドタイムのなか、着実に魔法の腕をみがいているようだ。
リンヤは、詩の練習を続けているが、できたと思うときもあれば、実際に現場で詩い、イマイチだったと、思うときもある。
リンヤは、固有スキルに、詩の魔法と召喚を使えるが、あまり危ないところには、出向かないため、魔法戦闘は、少ない。
しかし、今回は違った。
湖がほど近い、森を抜けようと歩き、その先にある、壊れかけの音楽教会で、森の妖精たちを相手に、歌おうと向かっているときに、魔族の盗みに出会った。
リンヤは、装備品も資金もほとんどなく、妖精ノートと、詩メモ用のノート、それに腕時計に御守りくらいしかなく、盗まれるものは持ち合わせいなかった。
それでも、あきらめないその魔族は、とにかく持っているものを渡せというので、断ってみたら、戦闘になった。
みたところ、悪魔系魔族らしい。
リンヤは、ダブルスキルにより、詩で自分のステータス値を上げながら、召喚をおこなう。
リミットサービスという詩で、リンヤのもつステータス値を上げつつ、召喚魔法で、トラニャス (ネコのようなトラ)を呼びだした。
トラニャスにも、リミットサービスの効果が足される。
そのまま、トラニャスの攻撃、セイントタワークロー。
魔族に、ダメージを与える。
すぐに、魔族の反撃がくる。
トラニャスにダメージ。
しかし、トラニャスのカウンターにより、さらに相手にダメージ。
悪魔系魔族は、逃げる選択をしたようだ。
しかし、トラニャスが、まわりこみ、捕まえる。
戦闘は終わり、トラニャスが話しかける。
「召喚体トラニャスだ。なぜ攻撃してきた」
「助けてくれ。
とにかくもうカネがないんだ」
「魔族なら、森だって、湖だって多少は生きていけるだろう」
「もう、辞めたんだ。
とにかく明日には、もう生きていけない」
「どうします? リンヤさま」
「とりあえず、さまはやめてくれないかな。召喚は、交換だろう?」
「いや、契約はあるじだ」
「わかったよ。
とりあえず、離してやってくれるかい」
トラニャスは、口の牙で捕まえていたが、ゆっくり離す。
すぐに、魔族は逃げだそうとするが、
そのときにリンヤは、言った。
「この先の教会に、謝りにいってください。そうすれば、森の妖精たちが、しばらくはお世話をしてくれるでしょう」
「わ、わかった」
トラニャスが話す。
「召喚ついでに、教会までいきましょう」
「久しぶりに、うたを聴かせてください」
「いいよ。さぁ、いこう」
教会につくと、先ほどの悪魔系魔族が、教会入口で謝っているところだった。
そのまま、去っていく。
きっと、何か教えてくれたのだろう。
壊れかけの教会に入る。
すると、空いた天井から、光がさしこみ、なかはキレイに光っている。
森の妖精たちが、集まり、声をかけてくれる。
「ありがとう、リンヤ」
「さあ、詩を聴かせて」
「夜のあいだ詩ってもいいよ」
「それは、どうしようかな。とりあえず一曲だね」
こうして、一時間ほどトラニャスとともに、詩を披露すると、魔族をおとなしくさせたものと、詩の礼として、
森のアイテムを複数と、リリアが喜びそうな、森の裁縫セットをもらった。
帰りに、トラニャスが森の外まで、警護してくれて、そのあと、召喚されたゲートの影にのり、帰っていく。
ビルにたどりつき、なかに入ると、リリアが起きて、待っていた。
さっそく、裁縫セットを渡し、出来ごとを話してみると、次は、トラニャスに会いたいという話しになった。
今度、召喚契約している者たちと、リリアを会わせてみようか。
にぎやかだろうな。
そう思いながら、二五時、タイムリセットまで過ごした。
タイムリセットがおこなわれる。
止まっていた時計たちが一斉に逆回転をはじめ、透明な空間がねじれるように、風をおこし、一瞬、部屋にあるものすべてが浮き上がり、そして、風が止むと、時計は再びとまり、物は静かになり、新しくきたものはそのままに、日付と時間を置き去りにして、ゼロになる。
年をとらない空間。
リリアに、ひとつ質問をしてみた。
「もし、ずっとこの空間にいれば、外にいる時間を除いて、年齢が変わらないわけだけど、例えば、三十年後だったら、リリアは何歳って答える?」
「うーん。日付は止まったままでも、経験は重ねたわけだから、年齢は増やしていこうかな」
「リンヤは、契約魔法が終わったら、何かしたい?」
「そうだね。じゃ、ひとの世界にある打ち上げ花火を観てみたいな」
「花火?」
「そう。魔法のようで、ひとがつくりだした、奇跡の光だよ」
「わかった」




