転生女子高生、演劇秋のたいカイ(前編)
この日、りーあは早めに起きた。
夢は、少し観ていた気もするが、起きたら、夢の気配だけ残して、もう現実の風景のなかだ。
早朝五時では、早過ぎかもとは思っていたが、準備だけして、散歩にでもいこうと決めて、朝の支度と日課を進めていく。
演劇の秋の大会、初日になる今日、軽い朝食と支度をすませてりーあは、朝の時間散歩にでた。
目的は、近い神社でお参りすることだ。
妖精333年生きて、神様には会わなかったが、魔法の存在が身近にあるおかげか、お参りやおまじない、願いのようなものは、信じているため、神社にて演劇の大会の成功と、少しの自分のための願いをこめて、この小さめの神社で願いごとをかけに、散歩にきた。
もう朝は冷えているが、冬はまだ少し先だ。
学園ジャージに、上着を羽織って、お参りをすませて、帰っていく。
寮に戻ると、寮の管理人に挨拶をしようと、入り口の待機所をのぞいてみるが、まだ準備中になっている。
こういうときは、事務所で作業をしているのだろう。
一階事務所にいき、ノックをする。
コンコンコン。
「おはようございます」
「おはよう。はやいね、りーあさん」
「今日、大会なんです。
あまり眠れなかった」
「そっか。もう大会の時期なんだね。
地方大会あって、進められれば県の大会になります」
「そっかぁ、がんばってね」
「ふふ、わたしは照明の補助なんです」
「でも、がんばるんだよ」
「はい。いまは何か作業ですか」
「いつものだよ。きた手紙確認したり
請求書まとめたり、少ししたら朝食の準備だね」
「わかりました。朝はもう軽く食べましたので」
「わかった。でかける時は気をつけてね」
「はい、いつもありがとうございます。じゃ」
こうして、事務所の部屋をでていく。
寮の部屋に入り、一度寝てみようかと思ったが、朝の空気を目一杯すいこんだせいか、それとも興奮からか、眠れそうにはない。
仕方なく、机に座り昨日の夜に途中だった、アクセサリーシュシュの作業をきりよく終わらせる。
時計をみるとそんなには経っていなかったが、ソワソワしているため、もう出ようと決めて、準備してあったバックと持ちものを確認し、それにトイレをすませ、洗面もきちっとしてみた。
それから、ようやく寮をでる。
秋の大会は、近くにある市民会館でおこなわれる。
荷物があるため、りーあは、自転車のかごに荷物を載せて、走りだす。
学園までは五分くらいでつくが、会館までは、十五分かかる。
時刻はまだ七時前。
誰もいないかと、思いながら、駐輪場に自転車をとめる。
荷物を降ろして、辺りを見渡すと、もう一台自転車があった。
「おはよー。はやいね」
「おはよう。りーあさん。集合までまだ三十分は時間あるよ」
「会館があくのは、さらにあとだから、早いよ」
「そうだね、とおやくんもだよ」
「眼が冴えてしまってね」
「早起きして、家の周りをジョギングしてから、準備してでてきたよ」
「わたしは神社にいってきたの。
願いごとしてきたよ」
「そうなんだぁ。
朝から、有意義だね」
「そうだね」
こう話していると、歩きできていたえみさんが声をかけてくる。
「おはよう」
「二人はやいね」
「おはようー」
「えみさんもだよ。電車でしょ?」
「そう一つ早いのに乗ったら、この時間だよ」
「そっかぁ。
朝早かったから、わたし神社にいってきたよ」
「そうーいいね」
「わたしもそういうことしてくれば、よかったかな。
もう少しあとになると、電車組のひとたちが集まってくるよ」
「そうだね」
「ねえ、誰もいない階段に座らない?」
「そうだね」
三人して、階段に腰かける。
荷物を端によせておくことにする
えみさんは、兄妹の妹役と音響の手伝いをこの大会では、することになっている。
照明係は三人でとおやくんとわたし、みゆさんだ。
「えみさんは、妹役、セリフかんぺきだね」
「あー、緊張で、セリフ飛ばしそう」
「えみさんでも、緊張あるんだ」
「あ、三人で、写真撮ろうよ。カメラ持ってきたよ」
えみさんが持ってきたカメラで、三人でポーズして撮る。
「カメラ好きなの?」
「一応、思い出とか、旅行先とかで持ってきて撮るよ」
「そっかぁ、カメラいいなぁ」
「スマホのカメラでは撮らないの?」
「なんかわたし、カメラ向いてないみたいで、うまくないんだよね」
「ほら、ためしに」
とおやくんの肩に腕をまわしたえみさんが、とおやくんにもピースをさせて、止まってみてくれた。
スマホのカメラアプリで、撮ってみた。
「大丈夫じゃない?」
「うーん、もうちょいうまく撮りたい。」
「そっかぁ、とおやくんは撮らないの?」
「うーん、あまり使ってないかも。ゲームとか、SNSしてるよ」
「そっかぁ」
「あ、台本読みしていい?」
「いいよ、えみさん、相手もつけよっか」
「あ、お願い」
こうして、台本読みをして、階段で過ごしていると、ほかのメンバーが集まってきた。
七時半には、ほぼ先生のぞいて皆集まり、にぎやかになる。
八時前辺りで先生がきて、八時に、扉がひらいて、市民会館のなかにはいる。
楽屋にそれぞれ荷物を置いたあと、部長が、今日のスケジュールを渡してくれた。
プログラムによると、学園の出番は午前三組めの番だ。
いよいよ、演劇秋の大会、りーあの初照明舞台が始まろうとしていた。




