転生女子高生、夏休み明けショにち
「おはよー」
「おはよ」
「久しぶりー」
「この前会ったよー」
「そうだっけ」
夏休み明けの教室はにぎやかだ。
りーあは、席につくと、さっきも会ったが、とおやくんに手をふる。
ふり返してくれた。
今度はななちの方も向き、
ななちにグーを見せようとしたら、その前に、ななちは、なにやらニヤけた顔をしている。
とおやくんの方を指さす辺り、からかっているのだろう。
ななちに向けて、手で拳銃の形をつくり、パンと撃つマネをしている途中で、くみさんが教室に入ってきていて、かわいいーと、後ろから接近してきて言う。
慌てて、手を戻すが見られていたらしく、
「ななちと仲いいよね」
「えー、からかってたきたから、撃つマネしただけ」
「そうなの?」
「あ、カラオケ楽しかったね」
「そうだね。昨日だよね」
「夏休み明けって変な感じなんだね」
「そうだね」
くみさんと話している間に、時間経ってしまい、予鈴がなる。
慌てて、くみさんは自身の教室に戻っていく。
9月1日、始業式と、少しのホームルームが続いて、昼食時間、またくみさんと、とおやくん、それにななちとお昼を食べた。
お昼の途中で、めぐやんが近づいてくる。
「わたしもまざっていい?」
「いいよ」
「今日わたしお弁当なんだ」
「あ、おいしそー」
ななちも、一緒においしそー、と声をかけている。
「でも、どうしたの? 元気ないね」
きいてみると
「音響もなかなか大変」
「そうなんだ」
「音集めたり、流す音楽決めたり」
「今日も、調べものあって、つかれたよ」
「そっかぁ」
めぐやんの頭をなでようとして、手をふれるときに、以前、預言者レポートを観たときに、めぐやんも階段で危険な目に遭うのだと、思いだした。
「リリラリルム リミルレレルラ」
転生魔法を使う。
「え、なに」
「ううん、おまじないなの」
「そうなんだぁ」
頭を二度三度、なでてみると、めぐやんは恥ずかしそうにして、
「も、もういいから」
「はーい」
手をどける。
少し目眩がしだした。
魔法を使って、消費したからだろう。
とおやくんがきいてくる。
「何か、フラついてない?」
「うん、大丈夫」
午後には、りーあは病院の診察があるため、学園の予定が終わると、すぐに病院にいく。
そういえば、くみさんは最近病院では見かけない。
診察日がズレたのか、よくなってきて、通う回数が減ったのだろうか。
病院で、体温と血圧をはかり、少し待つと名前を呼ばれて、なかにはいる。
コンコンコン。
「こんにちは」
「こんにちは、夏休み楽しめた?」
「はい、夏休みがとても新鮮でお祭りにいったり、花火観たり、買いものしてまわったり、とにかく大忙しでした」
「宿題もできたのかな」
「はい、最終日に、みんなで集まり、残りを終わりました」
なんだか、この精神科先生と話していると、なんとなく妖精の師匠を思い出す。
少し懐かしい気持ちと、何かしっかりと話さないといけない気持ちになり、落ち着くような、落ち着かないような、不思議な感じだ。
ためしに、きいてみる。
「くみさんは、最近みかけないですね」
「ああ、薬調整しているみたいね。
調子よさそう」
「そうなんだ。よかった」
「りーあさんも、記憶がよくなるといいよね」
「はい、でも、だいぶこの状態に馴染んできたかもしれません」
「そう」
「今日は、少し目眩がします」
「そう、薬の効果かもね」
「そうかもしれないです」
「また何か思い出したら、伝えてね」
「はい」
「電話してくれてもいいし」
「わかりました。
それと、最近とおやくんっていう同じクラスの演劇部の子と、だいぶ話しするようになりました」
「そう、よかったね」
こうして、午後の診察を終える。
入院や薬が増えていなくて、ほっとする。
ここで、出されている薬は、気分を落ち着かせるものと、睡眠薬が少しある。
次のときには、睡眠薬はあまり利用していないことも伝えてみよう。
病院をおえて、薬も終わって
でると、くみさんが病院の外にいた。
「あれ、どうしたのーくみさん」
「とおやくんにきいたら病院だっていうから来てみたよ」
今日はくみさんは三編みにして、髪はうしろに流れている。
この前から、少し何か話しがあるのかもしれない。
「くみさん、何か話しあるの?」
「え、よくわかるね」
「えーわかるよ」
「病院の先生でも、あまりわからないよ」
「そういえば、くみさんは、何か病気なの?」
「わたし、記憶喪失なんだ」
「え、くみさんそうなの」
「そう、中学生のとき、事故にあってそれから」
「そうなんだ」
「それで、りーあさんも記憶部分的にないってきいて、それでもっと話しききたいって思ったよ」
「そっかぁ。ここにきてるのは、その治療なの?」
「そうかなぁ。ときどき、何で来てるんだっけ、と思って、看護師さんとかに言うと、怒られるんだよね」
「この前、荒れてるときあったね」
「なんだ、見てたの」
「あ、そこのベンチにでもすわろう」
「そうだね」
二人してベンチにすわる。
近くには自販機が置いてある。
「あ、なんか飲む?」
「いまはいいや」
「そっかぁ。それで、りーあさんは、記憶って戻りそう?」
「うーん。どうかな。わたしの場合、この日記進めていけば、だいぶ戻るみたいだけど」
「そっか、てがかりあるんだね」
「くみさんは、もう治療は進んでるんだよね」
「そう。でも、体調とか気分とか、診てもらっただけで、記憶のてがかりなしだよ」
「そうなんだぁ」
りーあは、妖精時代のことを思いだしてみる。
なにか、使えそうな魔法はあっただろうか。
いや、魔法ですべて解決できるわけではない、と思いなおす。
「今度、ゆっくり話そう。記憶の手助けになるかもだし、くみさんと、もっとよく話しできるのは嬉しい」
「そう。ありがとう。あ、今日の予定はある?」
「うーん、あとは、夕方の買いもの、くらいかなぁ」
「じゃ、その買いものだけ、一緒にいっていい?」
「いいの? ありがとう」
二人して、ベンチから立ちあがり、電車にのるため、駅まで歩いていくことにする。
学園から、この精神科病院までは、電車で三駅の距離だ。
駅までの道のり、そして、電車と買いもの。
二人して、精神科病院の話しや斎藤看護師やイケメン看護師の話し、学園が楽しめてることなど、話しているうちに、買いものが終わってしまう。
「いつも、会話ありがとう。おかげで退屈しないよ」
「こちらこそ、また遊びとか誘ってね」
「わかった」
ショッピングセンターでわかれて、自転車で帰りながら、妖精時代に、よく話していた、もうひとりの帽子をかぶって、爪が長めな、尻尾がかわいい妖精の姿を思い出して、懐かしさがわいてきた。




