表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
檜山志堂の黙示録  作者: 山犬
文化祭編
11/11

第11話 優と円華と早百合はバンドを組み、志堂と楼は準備を行う。

檜山 志堂の父、檜山 志士雄は情が深い男である。

若くして先立った細君に操を立て、後妻を作ることなく

朝、帰宅後、就寝前の1日3回の必ず仏壇に

線香と共に1日の報告をするのだった。

この日課は亡くなってから現在まで、1日足りとも

欠かしたことはない。

しかしこの頃の志士雄は報告に困ることがあった。


「ーー母さんや。志堂のカバンから、最近変なものが。」


言い終わる前に、志士雄は自分の口を閉じる。

天国の妻を不安にさせるわけにはいかない。

志堂はいつもどおり元気だった。

そう報告すると、最近買った本を取り出して

読み始めるのだった。


【息子が女装癖だった時の家族の付き合い方について】


要らぬ心配をかける志堂だったのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


文化祭の準備はつつがなく行われていた。


「そこ、男子、もっと笑顔に!

 甘えるような、媚びるような

 ねだるような接客を心がけて!」


「飾り付け、滞りなく進んでま〜す。」


「ぅおいお前ら!

 女神のために一肌脱ぐんだ!

 特に運動部!

 その鍛えた筋肉はなんのためにあるんだ!?」


「「女神を助けるためです!!」」


喧騒と怒号、時折乱れる拳の中で

志堂はせっせとメニュー表を作っていた。


「一体誰がいつの間に考案したんだよ

 うちのクラスの出し物は。」


「ひーやんが家事に疲れて

 爆睡している最中だよ。」


一緒にレイアウトを考えながら

優が訂正を入れる。


そうか。あの日は衣替えの日だったか。

冬、春物をせっせとタンスにしまい込み、

夏物の服を引っ張り出しては洗濯機に放り込む。

布団のシーツや着布団まで干した時の

達成感や疲労感を思い出す志堂だった。


「にしても楼と浩二のバカはどこ行ったんだ?

 こちとらせっせと準備に勤しんでるというのに

 全然見かけないな。」


「ろーやんなら竹千代さんと生徒会に行ってるよ。

 何でも展示内容が過激だから修正しなさいって。」


「よかったまともな感性の人間も居るもんだ。」


「で、こーくんは野球部の打ち合わせに行ってるって。

 なんでも対抗試合が無くなったから

 組体操をやるらしいよ。」


「組体操なんて久しぶりに聞いたな。

 まぁ野球部は野球部で忙しいってことか。」


むさ苦しい男たちによる汗と涙の団体競技。

どの程度のことをやるのか、志堂には分からないが

一歩間違えば大怪我を伴うパフォーマンスだ。

きっと浩二は野球部につきっきりになって

クラスの方を手伝えないだろう。

早速一緒に恥をかく友人が消えたことに

志堂はため息をつくのだった。


「なにため息ついてんのひーやん。」


「いや女装やりたくないなぁと。」


「いやいやいやいや。いいじゃんひーやんは。

 メイド服でしょ? 露出度控えめじゃん!」


優は嫌そうな表情で志堂を見つめた。

そうだった。内面はともかくとして

控えめにも顔立ちの優れた優。

パット見て小学生にも思える優しそうな雰囲気の童顔は

ウィッグさえ付けてしまえば、きっと立派な男の娘として

成立してしまうような外見だ。

そんな彼が当日着る服は、なんとスクール水着。

志堂は一瞬脳内で再生してしまう。


「う〜〜む。金の臭いがするな。」


「でも当日そんなに接客出来ないかもなんだよね。

 一応文化祭のステージでバンドやるつもりだし。」


優は自信満々にエアギターを引き出す。

顔に似合わず、この男はバンドが大好きである。

その好きは聞くに留まらず、実際に自分でやるぐらいの

熱量で、時々街の箱に行っては飛び入りでギグしているらしい。

昭和のロックンローラーかよ。志堂は過激な遊びに

呆れながらも、少しうらやましい気持ちでその様子を眺める。


「そういえば誰とやるんだ?」


「え、気になる?

 多分そろそろ声かけてくると思うんだけど。」


「おいいいいいいいいいいいいいいーーーっす!!

 朝比奈に檜山!」


挨拶という名の爆音。

B29の再来ではなく、明るさ満点の少女、円華が挨拶しただけだ。

なるほど、コイツだったか。


「円華さん。そろそろ行く?」


「ん! 音楽室の許可もバッチリこんこんちきよ!

 生徒会長相手に大立ち回りだぜ!」


Vサインで勝利を報告する円華。

果たしてどういう方法をすれば

貝殻ビキニが許される世界線が

許されたのだろうか。

生徒会の沽券と我が校の教師たちの質を

問いただしたい志堂だった。


「あ〜。マジで疲れたぜ。

 これはもうアレだ。

 俺のナース服を免除してもらわないと

 割りにあわねぇなぁ。」


疲れた顔で楼が馳せ参じた。

なんだかんだ言いながら、

楼は根が明るく、顔面偏差値が高い。

そのポテンシャルで

積極的にコミュニケーションを取る人間だ。

きっと生徒会の交渉において、その力を

発揮したのだろう。


「貝殻ビキニがいいのかい?」


「なんでランクダウンなんだよ。

つーか俺が間入って交渉早く

終わらせたんだから、

とっととバンドの練習行ってこいな。」


「楼はやらないのか、バンド?」


バンドの参加メンバーとばかりに

入ってきたので、志堂は

楼もバンドの一員だと思っていたが、

どうやら違うらしい。


「俺は楽器とかよくわかんねぇからな!

 それに、竹千代と狭間がクラスの面倒見れない分

 ある程度まとめられる人間がいんだろ?」


「まぁ確かに。」


さらっと話に出てきたが

どうやら早百合も出るらしいようだ。

これは今年のステージは大騒ぎだろう。


「ーーごめんごめん。

 クラスの方ある程度キリになったよ。」


そんな会話をしてすぐに早百合が

小走りでやってきた。

教室の中でも一番忙しそうに動いてるにも関わらず

一体どこにそんな余剰分のエネルギーがあるのか。


「というか狭間も出るんだな?」


「うん。クラスの方も忙しいけどね。

 まぁ檜山くんが私の分も働いてくれるだろうし。」


「さらっと俺に期待するんじゃない。

 お前に出来ることが俺に出来るか。」


「何言ってるの。檜山くんには

 檜山くんにしか出来ないことがあるよ。

 会計とか、皿を洗ったり、料理作ったり。」


「あぁ、得意分野だ。」


脂汚れを落とすことと、損得計算、

利益率計算など、最早文化祭が始まる前から

志堂の胸を高鳴らせていた。

家事スキルにおいてこの教室の右に出る者は居ない。

謎の自負が志堂の中にはある。


「ひーやん。なんか楽しそうだね!」


優が笑顔でそう言うと、

志堂は少し照れくさくなった。

楽しいという自覚が少なからずあったからだ。

それを誤魔化すように、志堂は3人を急かした。


「うるさい。とっとと行ってこい。

 後のことは楼がやっとくから。」


「おー頼んだよ鹿島〜。

 私の後はお前しか居ない!!」


「後継者かって。」


意気揚々と進む円華に続く二人。

そんな後ろ姿を志堂と楼は見送るのだった。


「さって、これから大変だぜ〜志堂ぅ。」


「大変なのはお前だ。

 ホントに大丈夫なのか?

 俺にはお前がまとめるイメージが

 出来ていないんだが。」


「女子諸々の心配はあるが、

 男子連中はお手のモンだぜ。

 俺には秘策がある。」


そう言って

制服の胸ポケットから取り出したのは

【極上 4時間女教師SP】だった。

自信満々な楼に対し概ね不安の募る志堂だった。


「まぁなるようになるだろう。」


誰に言うまでもなく

志堂はボソリと呟くのだった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ