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神秘のベールと旅の足跡  作者: 裏虞露
商人と月影祭
127/127

【122】最終ラウンド

蹴り飛ばされ、起き上がろうとするニク。

そうはさせないと、クレーターの真上、戦場の真上に移動した迷宮から無数の『聖光(ホーリーレイ)』が降り注ぐが……当然その程度の攻撃はニクの結界に阻まれて届きもしない。


「私を!殺すですって???お前みたいなザコが!出来るわけないでしょ!?!?固定ダメージがあるみたいだけど、この程度なら回復の方が早いわよ!!」


「そうか」


ドーンは素っ気なく、ひと言だけ言葉を返してニクに突っ込む。当然ニクは無数の魔術を瞬時に放ちドーンを殺そうとする。言動とは裏腹にそこに油断はなく、転移罠に引っかかって死んだ間抜け(ドーン)を殺す為に向けられたとは思えない物量だった。しかし、それでも……


ドーンは素早く動いて石杭を、火球を、氷刃を、雷撃を躱し、どうしても躱し切れないものだけを盾で防いで前身し続ける。そこには先程対峙した時とは次元の違うパワー、スピード、そして技があった。


ニクはこの戦場の上空に布陣している迷宮を見て、今ドーンがどういう上京になっているのか思い至ったようだ。


「【迷宮創造(クリエイトダンジョン)】でボスになったのね?随分と思い切った事をするじゃない……ここはゲームの世界じゃないのよ?」


「お前がっ!言うな!!」


ニクに肉薄仕切ったドーンは鋭く槍を振るった。振るわれた槍をニクは当然避けようとしたが、ダンジョンボス化した事で全ステータスが大幅に上がり、さらには三つのボス補正を受けたドーンが振るった槍は確かにニクに届いた!


「くっ!」


このままじゃ結界に魔力を全部持っていかれる!

そう判断したニクは貼っていた結界を解除する。標的が急に居なくなった事でドーンはつんのめりそうになったが、体が勝手に動いて瞬時にバランスを持ち直し、回避姿勢カラ立ち直っている最中のニク目掛けて槍を振るう!


ーーーガキンッ!!


必殺の一撃かに思われたその攻撃はニクが目にも止まらぬ速さで展開した魔術『魔人結界』によって防がれてしまう。


「そもそも!その程度の事で今の私を上回れるわけがないじゃない!」


オーエンにかかっている迷宮ボス化の影響は。

【迷宮ボス】

・ステータス超上昇。

全ステータスを倍に、さらにその場にいる敵対者の数に応じて倍率は指数関数的にの向上。

・全状態異常無効化。

あらゆる状態異常を無効化、回避する。

・MP変換

MPをダンジョンポイントで代用可能

・守護者

ダンジョンの外に()()()()()


となっている。


ドーンの現在のレベルはだいたいLv75…それでステータスが倍化すれば、実数値はLv150…レベルがカンストしている今のニクと同等のステータスを得るのとが出来ている。もちろんレベル補正は受けられないが、それでも敵と同等のステータスが手に入ったのは大きいだろう。

それと、敵が他にも入れば多少ステータスで上回ることも出来たのだろうが、一人二人程度では誤差程度しか上昇しないのでそこは気にしなくていいだろう。


「『マジックウエポン』」


ニクを魔術によって魔力槍ををを形成し、ドーンが振るった槍と切り結ぶ。そこに膂力の差は殆どなく、あるのは武器と技量の差だけ、そしてその差はニクの方に少しだけ傾いていた。


槍と盾、槍と結界、そして槍と槍を互いに打ち付け合う!ガコンガコンと鈍い音が二人の間で止まることなく鳴り響き続ける。このままでは埒が明かない、そう思い始めた直後にパリンッ!とガラスが音が響き、ドーンの技が数段鋭くなる!


「ぐぅ〜!ポーションをつかったわね!」


ニクがそう吠えて、被弾覚悟で武器を振るった…が結果はドーンに一方的に削られる結果になった。



苦悶の表情を浮かべながら距離をとり、怪我を癒すニク。

ポーション、あるいはバフという意味でも儀式の魔女と呼ばれるニクの方が、今のドーンにかかっているバフよりも数段強力なバフが複数かかってるものの…それはあくまで魔術戦用のバフた、そのため近接向けのバフは殆ど受けて居ないから、元のステータス配分も相まって少なくとも近接戦においてはこの瞬間だけはドーンの方が優位だ。



速度の増したドーンの槍はニクをゆっくりとだか追い詰め初めて居た。


「くっ!」


当然、こんな展開はニクの望むとろではない。ドーンとニクの戦闘が始まってからもう既に二十秒以上経過している、黒蓮をなぶっていた時間も含めて計30秒……るしが目覚めるまで既に半分切っていいるのだ。


ニクは本当なら邪魔な女狐をなぶり殺した後、悠々と動けなくなっているるしを殺すつもりだったからだ。もしこのまま戦闘が長引けば、『位相次元』からるしが戻って来て2対1、流石にこの状況で勝てると思える程ニクは慢心していなかった。


「〈対価の天秤〉!『私に紐付けられた命を三つ捧げる!るしを殺しなさい!』」


「やめろ!」


ドーンにとってるしの復活は希望だった。もしここで自分がニクのことを殺し切れなくても、るしなら何とかしてくれるだろうという、淡い期待、希望。それをめのまえで打ち砕こうとする行為など、到底見過ごせるはずは無かった。


あと十秒


ドーンが投げ放った槍を、ニク避ける事なく受け止め、胸中を刺し貫いたが……〈対価の天秤〉は止まらず天秤が少しだけ傾く。


「チッ、もうこんなカスみたいなものしか残ってなかったのね!!あるいはるしが大きすぎるのかしら?『私に紐付けられたハイエルフとドラゴンを全てザ「シュッ!」ぐぅ!?」


ドーンは、ニクに突き刺さった槍の鎖を引っ張って強引に〈対価の天秤〉から引き離す!すると〈対価の天秤〉発動者が離れたせいか光を失い沈黙した。


ニクは自分に突き刺さった槍の束縛から逃れようと魔力の槍を振り回すが…それよりもドーンが引き寄せきる方が早い!


ドガアァァン!!


大盾によるシールドバッシュがニクにクリーンヒット、槍がノックバックを許さず、そのまま地面に埋め込むように追撃をする。


あと五秒


ニクを押さえつけている大盾が軋む音をあげながら一瞬でサビに多い尽くされる!


「なにかのポーションか!?」


自分が慌てて手を離すよりも早く、ニクは錆び付いて脆くなった盾を魔力の槍で逃げ遅れてたドーンごと刺し貫いてみせた!


「るし!!」


槍に縫いとめられ致命的なスキを見るドーンを無視してニクはるしに向かって走る。ドーンは慌てて残った槍をニク目掛けて渾身の力で投擲し、浮遊武器も向かわせたが……ニクの方が早かった。


1秒前に、ニクがるしを覆うように無数の魔法陣を展開し、終え…….るしの『位相次元』が切れる瞬間に無数の魔術が炸裂した!!


無数の強力無比な魔術が、ただ一人を確実に殺すために発動している。大きな土煙が立ち上りのその中から切り裂くような閃光が輝く。


ドーンはその光景を見て、また間に合わなかったと言う無力感に苛まれ、唖然としてしまったが。敵は待ってはくれない!


「お前も死になさい!」


魔術が自分に向けられる、浮遊武器で防ぎ、攻撃を中断させ、回避し……できる限り被弾を避けるがノーダメとは行かない。幾つかの魔術が避け切れずに当たり、体勢を崩させられる。その隙を逃さずに魔術が飛ぶ。


移動迷宮が雷鳴を轟かせ、閃光を発してニクを攻撃するが、それでも攻撃は止まない。

ドーンはボス化した事で莫大なステータスを得たものの、ダメージ効率は未だにニクの方がまだ数段上だった。それは経験と熟練がもたらす、戦闘の組み立て方や技の差し込み方に如実に現れて……しかしそれでもドーンの物量は圧倒的で……それ故に泥沼になるかと思われた戦闘は、削り合いの形相へと代わり戦いを終わりへと加速させて行く。


飛んできた魔術を浮遊武具で防ぎ、横にズレて回避し、迷宮からの無数の『聖光(ホーリーレイ)』を囮に『裂孔』で攻撃。『裂孔』だけが命中し、ニクが体制を崩す。


さらにこっそり【生命の生成(クリエイトオブライフ)】で生み出しておいた雲外鏡が【反射】のスキルを発動させて一部の魔術を弾き返して追撃を試みる……がニクは体制を崩したまま、即座に魔術を発動して相殺しそのまま連続で放たれる魔術を躱しきれず食らってしまう。


もちろん、それで死ぬことは無いが……体勢を崩す形になり、続く攻撃をもろに食らってしまったが其れはニクも同じ。


職業的にあっちの方が脆いはず、レベル差の補正があってもこのまま行けばこっちが先に削りきれるはず。


希望的観測、甘い理想、そんなに予感がひしひしと背筋を伝う。相手はあのクランユグドラシルのニクだ、そう簡単に終わるはずが無い…….そうでなくても向こうには創世機《対価の天秤》がある、もう一波乱は確実に…


「『《対価の天秤》よ、私の両腕を捧げるわ。その対価として…』」


やっぱり来た!何をするつもりか分からないが、阻止しなければ不味いのはまちがいない!


飛んでくる魔術を無視して、突っ込む。当然今までのひではない速度で生命力がゴリゴリと削られて行っているのは感じるが、ここで引いても死ぬだけだ。


駆け寄ってくる死の気配から目を逸らし、確実に訪れるだろう死を断つために……


「『私の周囲十メートル以内にいる私以外の全ての生命を今すぐ即死させなさい!!』」


不味い、不味い、不味い!!天秤がゆっくりと、しかし確実に動き始める釣り合い始めてる!


「届け!」


跳躍し、限界まで体を伸ばして振るわれた槍は…確かに無防備なニクの貫いた。しかし天秤はつりあい、一際強く輝いて……




再び不均衡になる。


「俺を忘れて貰っちゃ困るな!」


「な!?るし!!どうして!?確かに殺した手応えがあったのに!!」


「魔王に形態変化は付き物だろう?」


そういってどこからとも無く現れたるしさんは四対の白黒の翼を翔かせる。


ニクの気が自分からそれるしさんに向いた、その一瞬の隙を見逃さずに、浮遊武器を絡めた連撃を決めて……拍子抜けするぐらいあっさりと、戦いは終わった。




私情で申し訳ないですが、またしばらく続きを投稿出来ないと思います。

続きを楽しみにしてくださっている方々、申し訳ありません。

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