祖国の味
「お客様。御夕食が出来上がりました」
「ありがとうございます。行こう、ロベリア」女中頭に促されて、ルークは自分の部屋に来ていた妹と一緒に廊下へ出る。
メジンバーでも上級らしい会頭の広い邸宅。食堂には当主ヘイムダルとその夫人、そして見目麗しい二人の少女が座っている。
ヘイムダルが家族を紹介した。「我が双子のオリアナとエレノアでございます」
ふたりはロベリアより二つ下の十二歳で、どちらも美少女だった。
青髪の碧眼が「オリアナです。よろしく」
赤毛の金目銀目が「エレノアです。よろしく」
「今日は珍しい食材を用意しましたのよ」ヘイムダルの妻であるミニィが微笑む。年若い女中が給仕してくれた皿には、脂が溢れるステーキ。「アバスカルから輸入した魔牛の霜降り肉です。高い栄養価に加えて、その身には豊富な魔力が宿るため、彼の国では魔術師たちの回復手段として重宝されているそうですよ」
「これは……美味しそうですね」ルークは急激に腹が減った。
「わあ、懐かしいですわ……」ロベリアも嬉しそうで、視線がステーキへ吸い寄せられていた。食事が始まると、早速肉を切り分けて噛み締めた。「美味しい……。久しぶりに食べましたわ」彼女はこれが大好物だった。
そしてルークもこの肉には目がなかった。「これは旨い。とても上等な肉質ですね。心がとろける……」
「お二方には馴染みの味でしたかな?」ヘイムダルが尋ねる。
「僕らは、アバスカルからの亡命者なのです」
「ルーク様は異国の方なの?」ヘイムダルの娘が反応する。髪が青いのはオリアナだ。「素敵。格好いいわ」
「抜け駆けは嫌だわ、リア。私もルーク様に一目惚れしたのよ」赤毛のエレノアが張り合う。
双子の美少女はルークを誘うように見つめた。
「お客様を困らせるな」ヘイムダルが二人を窘める。
「はい、お父様」とオリアナ。
「ごめんなさい、お父様」とエレノア。
その後の夕餐は和やかに過ぎていった。ルークとロベリアは久しぶりのステーキを堪能し、分厚い肉を平らげた。傭兵時代、仲間との宴には魔牛の丸焼きがよく出された。切り分けた骨付き肉にかぶり付いてワインで流し込むのが、当時の食べ方だった。バレット家の人々と歓談しながら、ルークは故郷の思い出に浸っていた。




