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竜の姫君と巫女  作者: 剣持真尋


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破滅への挨拶

 オリカルカムの裸石ルースは天に坐す女神の性質を色濃く宿し、彼女の分霊となっている。新参の神として、メリオランテが成った三百数年前、速やかに最初の献身者が選ばれた。そして美女の魔術師が神殿を穿ち、聖域を整えたのちに死亡したが、当時から変わらず威光を湛えているらしい。


「貴方は今も格好良いわ。そして、可愛いひと」


 過去に愛し合ったこともある女性神と再会した美少年ヘランハルメ。オリカルカムから見つめられて、変わらない可憐な顔立ちを褒められた。そして少し間があり、質される。


「巫女は?」


 故人の復活を願うために訪れ、優しく迎えられたヘランハルメだが、彼と伴に居る人間を確認するまでもなく、女神は愛し子の居場所がわかるはず。連れて来なかった理由を訊ねられて、少し黙る。


「…………彼女を誘拐するのは骨が折れるんだ。現状は捕縛の段取りを整えている最中で、完了次第迅速に送り届けるよ」


「贈り物を届けてくれたのね?」


「そうだ。先に彼と引き会わせるよ」


「はじめまして。あなたの名前を教えて」


「カイル・バレットでございます」ヘイムダルの息子が名告る。自ら生贄の使命を表明し、父の約束を果たす。「私の肉体と魂と心を、女神様に捧げます」


 察したのはミンツェ。二十年の幸せ。宝を渡す約束。誰にか。誰を。魔術師見習いが不死者リッチに成るための代償。


 弟弟子の預言通りに。


 コリオリカは驚きに支配されている。女中として尽くす若様、少女として慕う優しい兄、乙女としてときめく想い人であるカイルが、服を脱ぎ始めて全裸で女神の宿る宝石に対面し、彼女は鍛えられた後ろ姿に束の間の興奮を覚えて、


「格好良い男の子ね。とても気に入ったわ。ねえ……早速、私に来て」とメリオランテが誘い、


「失礼致します」


 と、カイルが泉水に身を投じて、浸死するまでの間、動けなかった。「…………えっ?」


 聖漿に没する彼の遺体は潤び解れてゆく。


「ヘイムダル。お前の息子はやり遂げたぞ……」ヘランハルメは声をかけた。「僕のために生まれて、死んでくれてありがとう。カイル」そして彼が背後を見ると、


 殺意に満ちた女中が…………。


「お願いだから死んで!」コリオリカはヘランハルメに突っ込んだ。「よくも若様を!」彼女の握ったダガーは狙い通りにヘランハルメの心臓を刺した。


 ヘランハルメは吐血し、接近したコリオリカを見つめた。「あの子は贈り物となるまで育てられたんだ。ヘイムダルは不死になったことで、来たるとき僕に長子の所有権を譲ると誓った。カイルが、癒やしの神の伴侶に迎えられることに、お前は関係がない」


 振り返ると、ミンツェの拳がコリオリカの顔面を殴打した。彼女はヘランハルメを貫く短剣を握り続けることができず、鼻孔から流血して大理石の床に倒れた。


 ヘランハルメがダガーを引き抜くと、立ちどころに傷が再生して出血が止まった。


 ミンツェは若いコリオリカの結末を気の毒に思ったが、ヘランハルメは容赦なく気絶した彼女の首を刎ねた。「可愛いから、ジョアンナに教育させて後任にしてもよかったのに」


 グラディスは腕を延長してコリオリカの顔面に触れる。死体を手のひらから吸収して処理した。「美味い。乙女を食ったのは五十年振りだ」


「ああ……いいわ。あなた」聖漿に浸された贄の肉体を消化し、同化させながら、蒼い結晶は穏やかな口調でいった。


 カイル・バレットが崩れて泉に溶け込むと、メリオランテは当代の巫女を捕まえて、五日後に神殿へ連れ戻るようヘランハルメに伝えた。


 ラッセル兄妹はヘイムダル邸で囚えられ、神降ろしの儀式はロベリア・シドニィ・ラッセルを霊媒として執り行われる。

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