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第33話 メイド

キャバリア城に馬車が着いた。

だが案内されたのは離れの様な場所だ。

城の敷地内かもしれないが、城からはかなり距離がある。

こんな裏寂しい林の中の離れに案内されるとは思わなかった。

『この場所はあまり変わって居ない……昔はクローネがこの屋敷に住んでいて、僕はあの塔にいたんだ』

ユリウスが嬉しそうに指を指した塔は……すでにほとんど朽ちて居たが、罪をおかした王族などを隔離するような塔に見えた。

私は何も言えなくなってユリウスを抱きしめた。


クローネが住んでいたと言う屋敷は寂しい場所にあるが……ちゃんとした屋敷だ。

むしろレンセントにあるロッシーニ家の屋敷の何倍も広い。

屋敷に案内すると魔術師ヨークはすぐに居なくなった。

大量の警備の兵が居るが……一様に屋敷の外には出ないで欲しいと言う。

「つまりレンセントにおけるキャバリア特使と同じ対応としたのだろう。キャバリア王都の滞在許可期間中は出来るだけ何も見せず、監視をつけて城に閉じこめておくつもりだ。そしてその間に始末するのだろう」

部屋には警備の兵がたくさん居る。

つまり今のアルバートのセリフは宣戦布告だ。

殺せるものなら殺してみろという……。

風呂はアルバートと魔王で安全の確認をしてから使った。

部屋も全員で1つを使うことにした。

食事も具がたくさん入ったスープを鍋で出せと

アルバートが言い、食器やパンはアルバートのマジックバッグから出すらしい。

全てを出しても良いが旅の間は魔物を倒したり、果物を採取できる事から一番多い在庫はパンらしい……最悪長期化すると食事がパンだけになる。

アルバートがリスクは有るがスープだけは提供させようと言ったのはそういう理由らしい。

食事が旅行中とあまり変わらなくてがっかりだが……毒や眠り薬を入れられても困る。

アルバートは女王に会いたいのだと手紙を書いて兵士に託していたが……返事が来るかどうかはわからない。

そしてメイドがスープの入った鍋をワゴンで運んできた。

メイドは2人。

スープのワゴンを押すメイドは明らかにスカートが短い。

ももまで見えている。

私はアルバートを見たが、アルバートはそれを見ても挙動不審にはならなかった。

私はほっとすると同時にこれは何かを仕掛けてくるのだと思った。


ミニスカートのメイドはスープの鍋を置いたワゴンを押して部屋の真ん中にあるテーブルの方に進みでた。

もう一人のメイドは食器を積んだワゴンと共に入り口に立っている。

食器は要らないと言ったが念の為に用意してくれたらしい。

そしてユリウスが驚いた様に言った。

『……クローネ』

そしてユリウスが扉の前のメイドに一歩二歩と近付いて行く。

私は驚いて扉の側のメイドを見た。

まったく特徴の無い地味な娘だった。

2つにくくった髪は薄い茶色だし、どこにでも居そうなメイドだ。

確かにこの様な子に、儚げ美形王子のユリウスが『美しい』と誉めたら呪いをかけたくもなるかもしれない。


テーブルの方ではアルバートがミニスカートメイドに毒味をさせているが……。

私は扉のそばに立っているメイドに近寄って、しげしげと眺めた。

「女王にはお子さんが居るのかしら?」

キャバリアは300年女王の治世が続いているのだと聞いた。

レンセントに置ける人の寿命は四・五十年だが、キャバリアにはエルフが居てエルフは三百年くらいの寿命だとユリウスに聞いた。

魔術師はエルフが多いようだ、特使の魔術師もさっき城に案内した魔術師も耳が尖っていたし、この子も尖っている。

つまり女王は父が魔術師ゆえに寿命がエルフ並みなのだろう。

つまり女王はすでにかなりの高齢だ。

ユリウスが謝りたいなら、今がラストチャンスということだ。

だから私はこのメイドはクローネの血縁者なのかと思ったのだ。

メイドはしばらく考えて言った。

「いらっしゃいません」

にこりともせずに硬質な声でメイドは答えた。

私は首を傾げた。

「ではなぜ貴方は似てるのかしら?」

瞬間にメイドは跡形も無く消えたのだ。

私は相手が魔女だと言うことを軽く考えていたらしい……。

兵やメイドにさっきのメイドについて尋ねたが存在自体を認識していなかったようだ。

最初から居なかったことになっていた。

私は驚いた後で警備の兵に聞いた。

「女王はどんな人なの?!」

警備の兵はすかさず答えた。

「素晴らしい方です」

これは案内してきた魔術師の答えと一緒だ。

そして神々しく美しいと答えるのだ。


私たちは言葉で会話するのを最小限に抑えた。

つまり、私はユリウスに話をしてユリウスは魔王に念話で話をして、魔王もアルバートにそれを念話で伝えるのだ。

私とアルバートは話をするしかなく不便だが、間が抜ける為に兵にはなんの話をしているのかわかりにくいはずだ。

「ところでアルバートは大丈夫なの?」

私はメイドの足を見る。

「さすがにもう慣れた。見ないようにしようと思うのをやめた。」

慣れる為にじろじろ見たんだろうか……私はアルバートをしげしげと眺めたが、確かにもう顔も赤くないし動揺もないようだ。

女の子の足を見て赤くなるアルバートにはイラッとするが、……動揺するアルバートが珍しくて面白かったから少し残念な気もした。


毒味のミニスカートメイドに異変が無いことを確認するために、ミニスカートメイドは部屋にキープだ。

世には遅効性の毒もある。

これを毎回やるのは面倒だが仕方ないのだろう。

今日は手持ちのものをたべて、朝はメイドに異変が無ければスープを暖めて飲めばいい。

まぁ魔王が大丈夫と言えば大丈夫な気もするが……。


そして、翌日女王が会ってくれると知らせがきた。


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