不完全な神、堕ちたドラゴン、新生俺
お待たせしましたー!!
最近気付いたんですけどこの作品の登場人物、風呂・便所・食事欠かしてますね!!!!
気を付けます!!!!!
◇
「…しかし、それだけの力があればエレキにも対抗出来るやもしれんな」
起き上がったグレイスは殴られた頬を擦りながらそう言った。
確かに対抗は出来るかもしれないけど、未だエレキの力は未知数だ。七英雄達から得た記憶によるとエレキは神を目指していたみたいだし、もしあの状態が神なのだとすれば話は思ったより難しくなる。
正直に言うと、神には勝てない。いくら力を持ったところで人間ではやはり神には勝てないのだ。
「何を不安そうな顔をしている?エレキが神になっているかもしれないと言う心配か?」
「…お見通しかよ?」
「ドラゴンの観察眼をなめるでない。そして、余計な心配もしなくてよい」
「どうして?」
「奴は確かに神になった」
「駄目じゃねえか。余計心配だっつーの」
どうしてここで気休めになる事も言えないんだこいつ。
「最後まで聞け、馬鹿者。神にこそなりはしたものの、それでも奴は新参者だ。先の貴様の攻撃が多少なりとも効いたのを覚えているな?」
「あ、ああ」
「それこそが我が勝機を見出した理由だ。恐らくだが、エレキの肉体はまだ神として完全に出来上がってはいない。だから今の貴様の非力な拳が通ったのだ」
話を聞いているうちにグレイスが言いたい事が理解出来た。
つまり、掻い摘んで言えば今の«全力»を使える様になった俺ならば現段階で不完全な神であるエレキを倒せるかもしれないって事だ。
「ようやく理解出来たか。ならば解るな?こうして悠長にしてはいられないと言う事も」
「ああ…急がねえと。いっその事、スエナ達と合流してからとか思ってたけど……その前に、一つだけ聞いていいか?」
「何だ?」
「どうして、アンタはここまで協力してくれるんだ?一応、エレキの仲間なんだろ?」
さっき聞いた時は俺の真の力を引き出す為とか言っていたが、そんな事して一体何の得があると言うのか。
この瞬間の為にエレキの仲間になったと言うのはあまりにも不自然だ。
「うむ……何と言えばよいか、天と地を司るテンペストドラゴンである我は、昔から神との接触を許されておってな。今となってはその神と会う事すら出来なくなってしまったのだが、とにかくその神に頼まれたのだ。247日前のあの日、あの場所に現れるであろう人間を導いてくれと」
「神から…!?アンタそんな偉かったのか!」
「と言うよりかはあの神が特殊だったのだろうな。名をなんと言ったか…ク…ク……ダメだ、思い出せん」
「ジジイかよ」
「失礼な奴だな」
神の名前とか言われたところで分からないし、とっとと続きを話してくれと目で訴える。
グレイスはコホンと咳払いすると再び話を再開する。
「同時にその神からエレキと言う転生者の存在を聞き、可能ならば滅する為に接触を図り、そして敗北した」
「負けたのか!?ドラゴンなのに!!」
「一々煩いな、貴様」
ドラゴンですら負けたエレキを追い詰めたセスタって一体…。
「…それから、最初は神に頼まれて貴様と接触を図るつもりだった我は呆気なく洗脳され、今度は異能儀式空間に入った者が力を付ける前に殺せと言う命令を受けて、訳の分からぬテーブルの様な物に下敷きになっている貴様を踏み潰さんと降り立ったのが全ての始まりだ」
「あれ、殺す気だったんだぁ…」
異能儀式空間に入る前じゃなくて良かった。
あの時の俺の体は多分黒桜のお陰で強化されてたから、潰れて重いだけで済んだんだろう。
「まあ、その後貴様に殴られた衝撃で洗脳が解けて我に返ったのだがな。その点は感謝しようではないか、助かった」
こんなに礼言われて素直に喜べないのは初めてだ。
「…正気に戻った我は貴様に希望を見出し、従来の目的通りに貴様を導く事にした。エレキには逃してしまったと伝え、然るべき罰を受けさせられた後に創設された魔王軍八裂衆の燚の刃として任務を遂行しつつ、貴様とこうして再び接触出来る機会を伺っていた」
「…そして、今に至ると?」
「うむ。一度負けた身だ、エレキに逆らえばまさかとは思うが消されていたかもしれん。回りくどくなってしまってすまなかったな」
「いや、いいんだけど…魔王軍八裂衆って何?」
「エレキの黒剣から生まれし8本の魔剣を分け与えられた8人の配下の事だ」
「アンタみたいなのがまだ7人いるって事かよ、だりぃ」
「今の貴様ならば余裕だろう。必ず魔王軍八裂衆全員を倒せる筈だ」
俺の肩に手を置き、グレイスがそう諭す。
負ける気は全然しないんだけど、7人一斉に来られたら流石の俺も困る。
「当然!さ、時間無いんだろ?そろそろ行くとしようぜ」
「……ああ、そうだな。全てを終わらせに行くぞ」
俺は«創造»で直剣を。グレイスは魔剣ラグナジウスの柄に手を。
「新生レイ様の初陣だ!!行くぜ野郎共!!」
そうして、俺が扉を蹴破るのを皮切りにお互いが得物を抜剣して廊下へと躍り出るのだった。
尻尾が欲しい。




