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転生したら王になれって言われました  作者: 澪姉
第二章 冒険篇
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42話 害虫駆除中なんだ

「これを人間だけでやる場合って、どうすりゃいいんだろな?」


 そんな俺の疑問に、盛大に苦笑するハダトさんとレムネアが居てさ。


「アブラムシがかなり良質の油を体内に保持しているようですから、密閉の結界をどうにかすれば良いかもしれませんな?」


「そんなに難しく考えなくても、相手は虫なんだから、煙で(いぶ)すだけでもいいんじゃないかなあ?」


「ああ、そうか。別に燃やし尽くしちまわなくても、行動不能にすりゃいいんだからな……、さすが俺の妹、気が利くぜ。ほれ、こっち来い?」


「わぁい!」


 的確に要点を突いたアイデアを出したレムネアを招き寄せて、しっかり抱っこしてやる。


 ……つか、そうだよな、エルガーと一緒でレムネアも成長期なんだもんな、別に不思議はねえ、んだが。


 なんか、コイツ、背も高くなったし重さも増えたし、出るとこも出て来てるような……?


 いや、女同士だからそういう欲情があるわけじゃねえんだけど、唯一にして最大に俺が気にしてるのは。


 ――もしかして、もうすぐ俺、背丈抜かれるんじゃねーのか?


 ってとこで。エルガーから血を吸うようになってシンディから吸わなくなったんだけど。


 正直に言えば血に含まれてる魔力量がただの人間のエルガーと曲がりなりにも神族のシンディとじゃ雲泥の差があるからして、俺の背丈、っつか身体の成長に殆ど寄与しないんだよな、最近の吸血行為って。


 でもやっぱ、人間の血の味ってシンディの血なんかより断然甘くて蕩けて子宮に直撃級の味わいで……。


「コテツ姉? なんか別のこと考えてる?」


 そんなことまで考えてたら至近距離で大きな紅い眼を俺に向けて来る最愛の妹がそんな風に言ったんで、俺は現実に引き戻された。


「ああ、悪い、ちょっとな。……まあ確かに、相手は――普通の虫よりはかなり大きいし数は多いっつっても――ただの虫っぽいから、極端な話、ハッカ水とかの虫除けグッズも効くのかもな?」


 なんて考えてから、ふと思いついたんだけど。


「――そういや、ハインがサーティエの残してった家庭菜園のハーブの種をシンディと一緒に栽培して増産する話とかしてた気がしたな?」


「ああ、聞き及んでおりますな。街の郊外の軍用敷地の一部を盗賊ギルドに譲渡して、試験的に栽培を始めるのだとか?」


 休憩中のハダトさんが酒の入った金属水筒を渡してくれるんで、有難く受け取りながら、ハダトさんたち兵隊さんが飲んでるもんを見たら、ただの水で。


 俺だけ酒飲んだらなんか不味くね? って思ったんだけど、俺が液体以外受け付けなくて、特に酒が好物なのはもう周知らしくて。


 それで、どうも『お神酒(みき)』ってことで納得してるっぽいから、いいのかね?


 まあ、くれるっつーんだから、タダ酒で有難く受け取っとくけど。


「もうそんなとこまで話進めてんのか、相変わらず行動早ェよな、アイツ」


「ええ、幸い畑仕事に慣れている農家出身の兵士が多いものですから、力仕事の訓練の一環として割りと広範囲に耕しておりますね? 販売した折には軍の敷地を借用しているということで、販売量の何割かが軍の資金源になる、と聞いておりますが、それが?」


「いや、虫除けにハーブを使うと効果がある、って聞いたことあるんで、どうせ煙で燻すんだったらハーブ持ち込んでやってみたらどうかな、って思ってよ」


 なるほど、と目を輝かせたハダトさんが、すぐに懐から紙束を取り出して何か書き付け始めて。


 なんか、その様子が前世で初めてのバイトで、上司で教育係してくれた年配のおじさんが思いついたことを何でもすぐに手帳に書き留める癖あったの思い出して、すげえ懐かしくなっちまった。


「確かに、油を大量に持ち込むのは骨ですが、ハーブなら軽量で済み、燻さずとも単に虫除け用途であれば、更に軽量、個人携行で済みますな」


「油も、ぶっちゃけアブラムシ自体がすげえ良く燃えるんだから、一匹二匹捕まえて油抜いたら燃料になるんじゃねえのかね?」


「ふむ……、コテツさまの炎の火力もあるとはいえ、あれほど引火性が強い油であれば、持ち帰って燃料用途に使えるかもしれませんな」


 なんて話を、俺の出した<土壁(ハエ・ラム)>で出入り口を密閉した上で。


 内部を<火炎(ナーリエ)>で満たして高熱で焼いてる最中の、脱出してきたさっきの部屋の様子を見やりながら休憩がてらの雑談してたんだけどな。


「……あの人のお話、きらーい」


 そんな風に不貞腐れて、つーん、なんてそっぽ向いてるレムネアが俺の腕の中に居て。


「んん? 十三年ぶりに会った父親の話だろうに、オマエ、アイツのこと嫌いなのか?」


「……だって、あの人、ママのことずっとほったらかしにしてた癖に、急に現れて『ほらっ、パパだよっ、おいでレムネアっ!』とか。――そんな軽い人、父親だって認めたくなーい」


 ますます不機嫌になるレムネアに、俺とハダトさんは顔を見合わせて苦笑い、って奴だ。


 思春期の女の子の親父嫌い症候群も混じってんじゃねーのかね? こういうのは俺も体験したことねえし、まるっきり専門外でどうしていいのか判んねえや。


 とりあえずハインの話はレムネアの前じゃ禁句、ってことで納得して。


 そんで、エレベーターで下る前に上で待たせてた二人の新兵のうち、一人に、サンプルってことでハダトさんが足を切り落として身動き出来なくした、まだ生きてるでっけーアブラムシを持たせて街に報告がてら帰還させて。


 もう一人を俺たちと一緒に居る、下の本隊に合流させた上で先に進むことになったんだけど。




 ――まさか、そいつが得難い人材になるとは、夢にも思ってなかったぜ。



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